ロスト・パピヨン (ページ26)

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｢あの、お風呂ありがとうございました、｣

『ちゃんと浸かった？随分身体が冷えてたみたいだけど…』

｢はい、ちゃんとゆっくり入りました、！｣

あたたかいお風呂まで沸かしてもらって、促されるまま入ったそこからあがる頃には

脱衣所に置いてくれていた、可愛らしいナイトウェア。

普段はこんなに女の子らしいものを着て寝ないから、なんだかちょっとだけむず痒い。

入る前に鏡の前で見た自分の顔は、驚くほど疲れてげっそりしてしまっていて我ながらギョッとした。

『えっとね、寝る場所は…』

｢あの、ほんとにありがとうございます。何から何まで…｣

『いいのよそんなこと、何かあったら遠慮なく言ってね？』

お風呂にご飯に、汚れたわたしの服の洗濯までも。

まるで本当のお母さんのように接してくれるこの人が話しかけてくれるたび、無意識に泣きそうになった。

優しいその瞳に、これ以上甘えて＂はい＂なんて言えなくて
ただ下げた、少し濡れたままの頭。

皇｢あれ、Aもうあがった？｣

｢！う、うん｣

『ちょうど良かった！コウキ、Aちゃんに寝室案内してあげてくれる？布団とかの準備は終わってるから。』

皇｢分かった、おやすみお母さん｣

『おやすみなさい。Aちゃんも！』

｢おやすみなさい、！｣

＂おやすみ＂も、なんだか久しぶりに言ったような感覚。

微笑んだコウキのお母さんの顔は、優しい月明かりみたいだ。

この家の人たちも…みんな、そんな感じがする

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