ロスト・パピヨン (ページ11)

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…ふああ、よく寝た

なんだろうここ、
あれ？まだ夢の中か…。

ふかふかに広がった赤色の芝生に
いくつも立つ、細く長いシラカバの木。

空は…木の枝と葉っぱで見えないや。

.

｢あ、……｣

ぽわぽわした空気なんて、私には与えてもらえないなしい。

ほんの、5m。

その先にいたのは、昨夜見たあの生き物で

なんでまた、？とか、これは何？なんて考えよりも
動かなきゃ、そう思うのに

身体はまた強ばって固まったまま。

小さく漏らした声に反応して振り向いた "ソレ" は、不思議そうに大きな目を細めて私を見つめたと思ったら

カッと目を見開いて、野生の獣のようなスピードで
飛びつこうと走り出した

｢っ、｣

もうダメだ。今度こそおわりだ…っ、

覚悟を決めて、どくどくと波打つ心臓を押さえながらギュ、と目をつぶった

その刹那

凄い勢いで、誰かの腕に肩を引き寄せられた。

｢、？！｣

そしてふわっと身体が宙に浮いたから

ああ、しんじゃったんだ私。

天に昇ってるんだ。どうせなら、最後に美味しいもの食べたかったなあ…

なんて、完全に命が失くなったものと思ったのに

あれ、なんか違う

『走って』

｢え、？｣

確かに左耳にささやかれたその声は男の人のもので、驚いてパチッと開けた目の先には

鬼の形相で私を追いかけるあの生き物。

｢ひいっ、｣

怖い、怖すぎる、

なにあれなにあれ、どうしてあんなに速いの

｢僕の声聞こえてる？｣

今度は頭上から聞こえたさっきの声に、思わず上げた自分の顔

｢え、？｣

今置かれている状況を、私はやっと理解した。

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