ロスト・パピヨン (ページ2)

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｢おかあさん！！絵本よんでー！｣

まだ、世の中のことなんて考えずに

無邪気に姉と庭をかけ回っていた頃。

私はよく、お母さんの膝に寝転んでは
本を読んでもらっていた。

『じゃあ今日は、このお話にしようかなー』

読んで読んで、と私たちにせがまれるのを分かって
毎日本を選んでくれていた母は

その日、見慣れない分厚い本を手にしていて。

深緑のカバーに、ほんの少し被ったホコリ。

きっと書庫の奥からひっぱり出して来たんだろう。

一枚一枚の紙が日焼けして、色が茶色く変わってしまっていたそれ。

姉と2人、母の膝に頭を置いて

交互に頭を撫でられながら、この頃の私は
ただの物話だと思って耳を傾けた。

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『むかしむかし、あるところに

人間が暮らす世界とは少しだけ違う生き物たちが、ひっそりと暮らしている世界がありました。』

『そこに住んでいるのは、＂醜人＂(アグリー)。

人間の世界ではそう呼ばれ、人々に蔑まれてしまう者たちが、そこに集まって生きるのです。』

『その世界では、毎日どこかで争いが起こります。

人間のせいで曲がってしまった性格の生き物同士が、いつしか結束よりも喧嘩をするようになったのです。

やがてそれは、人間の世界にも及びました。』

『 " この争いの元は人間であろう。人間を始末してしまえばよいのだ "

そう話し合ったアグリー達が、人間界に押し寄せ

一方的に民を攻撃しだしました。』

『その時生きていた人間は、誰もアグリー達のことを知りませんでした。先祖が伝えずにいたからです。

意味の分からない武力に怒った人間は、アグリー達を元の世界に追いやり、

二度とそこから出ることができないよう、閉じ込めてしまいました。』

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