ロスト・パピヨン (ページ4)

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『A！！また貴方は…、！』

｢なにがいけないって言うの？！私はお母さんのお人形じゃない！！｣

近頃の私は、母と喧嘩ばかりだ。

意見の食い違いで反対を主張すれば、聞く耳を持つどころか呆れた顔をされる

なにかする度にため息と愚痴をこぼされるこの家の空気感に、私の心はそろそろ耐えきれなくなっていた

そしてなにより、

｢はぁ、、どうしてアンナは聞き分けが良いのにAはこうなのかしら、？｣

5つ年上の

綺麗で愛嬌があって、お母さんの言うことは素直に聞いて、すでに婚約相手も決まっている

そんな完璧な姉といつも比べられることが、
1番の苦痛だった

｢…っ、｣

ダメだ、お母さんの前では泣いたらダメ。

意地っ張りな自分の変なプライドだけが、零れそうになる涙をぐっと堰き止めていて

それが零れ落ちてしまわないうちに、と
まだ嫌悪感の残る部屋を出た。

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私はお姉ちゃんじゃない。

どうしてお母さんは、私自身を見てくれないの、？

階段を登りながら頭の中を駆け巡ったいろんな感情は、いつの間にか足音をどんどん大きくさせていたらしい。

ああ、余程響いてたんだろうな

2階に上がり終えた時、お姉ちゃんの部屋の扉が静かに開いた。

『A、おいで。』

母と何かある度に慰めてくれる優しいお姉ちゃんだ

今日も下から聞こえる怒鳴り声を気にかけながら、ひとり
部屋にいたんだろう。

ひょこっとドアから顔を出しては手招きをしてくれたお姉ちゃんの部屋に黙って入って、

いつものように2人で腰掛けたベッドの横。

『今日はどうしたの？』

｢…お母さんの言ってることは違うって、私の思ってること、言ったら、っ｣

堪えていた涙が溢れ出して、それすらもなんだか悔しくて、どんどん頬を流れるものは増えていく。

頭を撫でてくれるお姉ちゃんの優しい手が、じわじわと胸に沁みた。

『Aが自分の意見を主張することは否定されるべきことじゃないわ。

でもお母さんも余裕が無いのよ。わかってあげて？』

…分かってる。

元々裕福だった私の家が、前より少しだけ貧しくなってきている事も。

お父さんが働きづめで近頃戻って来ないのも

お母さんがストレスを溜め込んでいることも。

全部頭では分かっているけど、

上手くやりすごせるような余裕は、今の私になんて当然あるはずも無かった。

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