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『はい、どうぞ？』
｢ありがとうございます、…｣
ホカホカと湯気の立つシチューが入った器。
わざわざそれを私の分までよそって渡してくれた2人のお母さんが席に着くと、みんなでいただきますと手を合わせた。
｢いただきます、｣
木でできた丸いスプーンですくった一口
みんなが食べ始めたのを見て、私も口に入れた。
｢…っ、｣
星 ｢え、？！ど、どうしたの｣
『口に合わなかった、？』
｢ちが、っ、…｣
ちがうの、
泣いたりして ごめんなさい。
あったかくて、優しくて
寂しくて傷だらけだった心が、ちょっとびっくりしちゃっただけなの。
｢おいしい、…とっても 美味しい、っ、｣
皇 ｢、｣
さっきまで嬉しそうにスプーンを持っていた手を止めて、心配そうに私を見つめるみんなも
いきなり泣き出されて、きっとびっくりしてしまっていて。
でも一度流れてしまった涙は、なかなか止まることをしてくれない。
だって、こんなあったかいご飯、最近は食べたこと無かった。
いつも張り詰めた空気の中、食器の音ひとつにすら緊張しながら 恐る恐る食べていたんだもの。
できるだけ早く、できるだけ綺麗にって
そればかり考えて。味すらよく分からなかった。
｢おかわり、ください…っ、｣
皇 ｢、(笑)｣
『たくさん盛ってあげるからね、ちょっと待ってね(笑)』
星 ｢おれもおれもー！｣
この世界に来てから初めて食べたご飯は、今の私にはあたたかすぎて
ひと口、またひと口食べる度に涙が流れるから
クリーミーなはずのそのシチューが、ちょっとだけ
しょっぱかった。
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作者名：スイ. | 作成日時：2021年10月1日 20時
