ミセス ナシゴレン

49 疑似恋愛 ページ50

「ズバリAちゃんは兄者が好き！」
兄者さんと居る時の私は生き生きしているそうだ。
穏やかで懐の深い人間だから、気持ちにストレートで俺様な兄者と相性がいい。
兄者がリードしてAちゃんが応えて支えてあげてるのがバランス良く思える。
そうおついちさんは語った。
「兄者と居てドキドキするでしょ？」
「そりゃあしますけど。それはファンとしてだと思いますし…」
「僕はそう思わないけどな？」
おついちさんはニコニコしている。
彼にはそういう風に見えるのか…。

「あの…」
ここはもう相談しよう、とドンさんについても正直に話してみる。
兄者さんはおついちさんにだけ話していて相談していたみたい。
ならば話は早い。
二人の事を異性として意識していなかったから、今は自分の気持ちを確かめているところで。
ドンさんより増して兄者さんのアプローチが凄くて…という状況を話した。
「それだけドンさんに取られたくないって事じゃない？」
ドンさんから気をそらすために兄者さんは頑張っているんではないか、そうおついちさんは解釈している。
「ドンさんがダメって言ってる訳じゃないけど、僕は兄者とがイイって思う」
ドンさんの緩い性格が合わない気がする、と。
続けてとんでもない事を言う。
「試しに疑似恋愛してみたら？」
「は、はいっっっ！？」

「ドンさんの事好き？付き合いたい？」
「い、いや、まだそこまでは…」
「じゃあ兄者と付き合ってみてよ」
「じゃあってそんな軽く…っ」
Aちゃんももういい歳なんだし、女の子は恋愛すればお肌の調子も良くなるし。
それに憧れの兄者と付き合えるんだよ？
一石二鳥じゃないか、なんてグイグイ勧めてくる…。
そんな事言われたらそりゃ利点があるように聞こえるけども。
「お試しなんて、兄者さん怒りそうですけど…」
もっともな事を言っておついちさんに諦めてもらおうと思った。
「僕に任せて♪」
あれ…(汗)

兄者の取り扱い分かってるつもりだから、と彼はキューピッドになる気満々だ。
これはヤバい事になったぞ。
今度こそ私の体がもたないかもしれん。
「それじゃ気持ち入れ替えないとね！」
と言うとモニターに顔を向けた。
そうだった、今はナシゴレンっ！
私も顔を上げる。
そのテレビモニターにはドンさんが楽しそうに喋っている姿が。
私が兄者さんと疑似恋愛するって知ったら、ドンさんどう思うかな…。
少しでも期待を持たせた自分が悪人に思えてしまった。

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