ミセス ナシゴレン

32 チャレンジ ページ33

「え？お二人どちらか行かれるんですか？」
「うん、これからおついちさん家でゲリラやるんだ」
「Aちゃんは気にせずゆっくりしていきなよ」
はい…？
この家に私と兄者さんの二人きりになってしまいますが？
お二人さんごゆっくり〜、と出て行ってしまった。
ファンが楽しみにしているゲリラライブ、それを制止させる気にはなれなくて。
何の言葉も掛けられず、私は彼らの動きを目で追うだけ。
結局引き留める事は出来なかった。
ガチャン…と玄関の閉じる音がして急に静かになった。

「A…」
「は、はいっ」
「車好きだって言ってたよな。レースゲームでもやらないか？」
仕事部屋だと通された部屋は完全2bro仕様。
コンクリートの壁がクールな部屋。
ゲーム機、パソコン、マイクなどの収録用機材が沢山、奥のスペースにレーシングシミュレータが置いてある。
3人でも広くて快適に遊べそう。
凄い贅沢…ホント仕事だ。
趣味の域を超えてます。
レースゲームの中でも、この前実況していたF1の最新作が気になった。
シミュレータの操作方法が分からないので兄者さんにレクチャーしてもらう。
まず兄者さんのプレイを隣で見る。

なんでもかんでも設定できるみたいで、折角なので私が実際行った事のある鈴鹿サーキットで走ってもらう事にした。
おぉ、観覧車まで再現されてる！
車はメルセデスで。
メタリックでエメラルドに輝くボディは、今年のモーターショーで一目惚れした。
それをあの兄者さんのプレイで実現するなんて！
はぁ、幸せ…。
彼も鈴鹿のコースは好きらしく走り込んでいて慣れているし、メルセデスという事でパワーがありよく走る。
彼は好タイムを叩き出した。
交代してもらい次は私がプレイする。
同じく鈴鹿でメルセデス。
ギアの変え方だけ教えてもらい、とりあえず走ってみる。

なんで1分も差が出るのっ！
兄者さんは横で笑っている。
「おっつん並みだなwちゃんと教えてやるよ」
ギア変えのタイミング、アウトインなど細かいテクニックを落とし込んでもらい再びチャレンジする。
すると30秒縮んだ！
「後はコースを頭に叩き込む。それだけで20秒は削れる」
「たった数分のレクチャーで…。兄者先生ありがとうございます！」

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