Nectar【川村壱馬】

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大熱狂に包まれたまま、ライブは幕を閉じた









続々と会場を後にする観客達をぼーっと眺めながら、椅子に座ったまま余韻に浸る









関係者席で一緒に観ていた他の方達は、ライブが終わるだいぶ前に居なくなってしまっていて









気付けば一人、取り残されていた









哲「Aちゃ〜ん」









声のする方を振り返ると、
汗だくのままの哲也さんが手招きをしていて









「哲也さん…」









椅子から立ち上がり、ゆっくりと歩いて行く









哲「ちょっと…泣きそうだよ？どうした？」









哲也さんの目を見ながら、
彼の居る扉の向こうへと歩みを進めた時









健「Aちゃーん！！」


「わっ！」









両腕を広げて走ってきた健太さんに、そのままの勢いでぎゅう、と背中に手を回される









翔平「うわぁ！！！」


慎「！！！」


陣「こらやめなさい健太！！」


健「やだ〜」








爽やかな笑顔で抱き締める健太さんの向こうに









あわあわと慌てふためく陣さんと、
先程此方を見てコソコソ話していた２人









どうしたらいいものか…









身動きが取れないままでいると、
スッと立ちはだかった哲也さん









哲「あらあら…Aちゃん、ごめんねぇ？
健太、可愛いのは分かるけど離れようか？」


健「……哲也さんに言われたら仕方ない」









素直にパッと離れた健太さんに
空かさず陣さん達は問い詰めに行って









翔平「慎が、アメリカンボーイだからって調子乗ってるって言ってますよ！！」


慎「え、そんな事…」


陣「よく言った翔平！」









少し離れた所からその様子を見ていると









哲「帰りは佐野珈琲までの車用意してるからね。一緒に帰れなくてごめんだけど…」









わざわざ抜けてきてくれたんだな…









「全然大丈夫です！また、感想言わせて下さい」









足早に去って行った哲也さんに手を振り、言い争う４人を横目に、静かに立ち去ろうとすると









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「…え」









ぐいっと優しい力で腕を引っ張られた先には









壱「…また会える？」









探し求めていた、ボーカリスト









言われるがままに、小さく頷くと








耳元に顔を近付けられて









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壱「……教えてあげる、俺の事」









危うく全身の力が抜けそうになる感覚は









不意に与えられた、幸福





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