Nectar【川村壱馬】

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ゴロンと横になった彼を見て、ソファーから降り、落ちたタオルケットを拾い、広げて掛けてあげる









その瞬間、小さな風がふわりと前髪を靡かせた









綺麗な黒髪…









クッションに頭を沈ませた壱馬は、薄っすらと目を開けて此方を見たまま、小さく息をしている









「眠れない？」









彼の前に座ってそう言ってみると、
遠慮がちに、コク、とゆっくり頷いた









…可愛い









こんな姿、誰にも見て欲しくないや









と、弱った彼にそんな感情を持ってしまったものだから、こんなの邪念だ、と頭を振る









「そうだ、タオル冷やしてくるね」


壱「いい」


「お…っと」









少しでも熱が下がったらいい、と
ソファーに手をつき、立ち上がろうとした時









力無い手が、腕をきゅっと掴んだ









壱「いいから、近くに居ってよ」









その一言に、キッチンへと向かうのをやめ、再び彼の前へと腰を下ろした









すると、腕を掴んでいた手がゆっくりと下りてきて、私の手をぎゅ、と握り締める









甘えるような彼を見て、前髪に手を伸ばし、ゆっくりと撫でていくと、とろんとした目が閉じる









「…」









暫くすると、規則正しい寝息が聞こえて









頭を撫でていた手を止め、ゆっくりと立ち上がる









「キッチン、借りるね」









タオルケットをもう一度掛け直してあげて、彼が起きた時に食べられるようなおじやを作る事にした









ご飯と、卵、ネギもある









壱馬は、自炊とかちゃんとするんだ









もっと色々な事を知りたいな、と思いながら、静かに料理をし終えて様子を見に行っても









スヤスヤと気持ち良さそうに眠り続けていて









きっと仕事詰めで疲れてたんだろうな









両腕をソファーに置き、彼の寝顔を見ていると、気付けばウトウトと船を漕ぎ









あろう事か、意識を手放してしまっていて。









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「ん…」









次に目を覚ました時には、壱馬の優しい瞳に捉えられていた









壱「…おはよ」









肩にブランケットが掛けられていて、頭を撫でていたらしい壱馬の手が、ぽん、と再び頭に乗せられた









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