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幼なじみ ページ3

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『A、今日も行くやろ?』



壱馬はそう言っていつものようにふわっと笑う。

でも私は壱馬に言わなくちゃいけないことがある。

幼かった私には少し内容が重かった。



『うん、』



そんな私を見て何かを察したのか、壱馬は私を包み込む。

ふわっと香る壱馬の匂い。

いつもこの匂いに安心させられてきた。



『……なんかあったん』



でももうこれからはそうはいかない。

自分一人で何とかしなくちゃいけない。


ふぅ、と一息ついて覚悟を決めた。



『壱馬、私引っ越すことになってん、』

『は、?』

『来月、もう行かなあかんねん』



ふと、私を抱きしめる腕が緩んだ。

壱馬は目を見開いてびっくりしている。



『どこ、いくん、』

『東京……』

『ダンスは?続けるやろ?』

『多分、』

『多分ってなんやねん、』

『ごめん、……』



苦しそうな顔をして、壱馬は呟いた。





『……なぁ、また会えるよな、?』









「……ぃ、おーい。らーいーさぁーん」

「っ、どうしたの?」

「どうしたの?はこっちのセリフですよ」

「lieさん、珍しくぼーっとしてますけどなんかありました?」



そう言って鏡越しに顔を覗き込んでくるメイクさんの(あお)ちゃんと朱里(じゅり)ちゃん。

無意識にため息まで出ていたらしい。



「ちょっと考え事。なんでもないよ」

「ほんとですか?なんかあったらすぐ言ってくださいね?」

「んふ、ありがと」









昨日撮影は終わっていたから、インタビューをしてすぐに終了。

車に乗りこみ、窓の外で流れる景色を眺める。



「……今日のインタビュー、川村くんのことでしょ」



マネージャーの七瀬(ななせ)がバックミラー越しに話しかけてくる。



「この業界に入った理由は幼なじみに気づいて欲しかったから、でしょ?」



なんでホントのこと言わなかったの、と七瀬。

別に『歌やダンスが好き』も嘘ではない。



「……壱馬はそんなこと言うぐらいじゃ気づいてくれないよ」



壱馬はもう手の届かない存在になっちゃったんだから。

きっと壱馬はもう私のことなんか忘れてるんだから。



「あと、“壱馬のことだ”なんて一言も言ってないから」









.

手の届かない存在→←夢か現実か、又は幻か



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L(プロフ) - katayose08さん» コメントありがとうございます!わわわ!お誕生日おめでとうございます!このコメント見て私もにやけました(笑) なんて偶然……!壱馬さんにエメラルドグリーン貰っちゃってくださいっ(はーと) これからもよろしくお願いします! (2020年6月7日 20時) (レス) id: c720a73cf9 (このIDを非表示/違反報告)
katayose08(プロフ) - コメント失礼します!実は私今日誕生日で…(だから何って感じですみません)まさか好きな作品でこんな偶然…奇跡があるなんて思わなくて1人悶えてます…!いつも応援してます!これからも頑張ってください! (2020年6月7日 19時) (レス) id: c639772b61 (このIDを非表示/違反報告)
L(プロフ) - おしおさん» コメントありがとうございます!わわ!そう言っていただけてめちゃくちゃ嬉しいです(涙) 更新頑張ります!よろしくお願いします! (2020年6月4日 12時) (レス) id: c720a73cf9 (このIDを非表示/違反報告)
おしお - めっちゃ面白いです!これからも更新頑張ってください!体調、お気を付けてください(^-^) (2020年6月4日 11時) (レス) id: 9ab6e33145 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:L | 作成日時:2020年6月3日 10時

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