靡くほどに美しく壱 (ページ33)

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化学療法が始まった初日はそんなにきつくなくて、だるいなーって感じ。ちょっと熱が出ちゃって目がうるうるしてたらしい。

問題は翌日からだった。

なんも食べてないのに止まらない吐き気。まぁ、吐くものもないからえずいてるだけなんだけど。

「気持ち悪いね……ひとくちお水飲もうか」

はいっと渡してくれた水も飲んで直ぐに吐いちゃう。

「りょおた……あつい……」

氷枕持ってくるから待っててね。と頭を撫でて部屋を出ていった。

この気持ち悪い上に何も食べれずに、口内炎で口の中が地獄のように痛いのは終わるまで続いた。
後半なんてもう口内炎で口が痛すぎて喋れなかったし。

投薬が終わったからあとは回復するだけですよなんて言われてもそんな簡単に治らねぇだろうよ。笑

外はもう暑くないのだろうか。
気づいたらもう9月だし。
こんなに室内に籠っていたこともないけど日焼けしなくてありがたかったかもしれない。

「ナベ～リハビリ行くよ」

呼びに来たイワモトさんに「ねぇ、外暑いの？」と聞くとんーちょっとまっててと言い残して入ってきたばかりなのに部屋から出ていった。

しばらくして戻ってきたイワモトさんは

「歩けそう？外行くよ！あ、中庭だけどね」

初日の怖い人だというイメージを覆せるぐらいふにゃ、っと笑った顔は目じりが垂れて可愛い。

「はい、じゃあ頑張ろう」と言われて連れてこられた外の世界は暑さは残るものの、夏の終わりの匂いがして気持ちが良かった。