靡くほどに美しく壱 (ページ28)

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なべが暇っていうからやることも終わったし病院によることにした。

もう絶食になったーって食べてなかったのに食べたかった、みたいなLINEが来たから頼まれてた化粧水だけ持って話し相手になるべく通い慣れてしまったエレベーターを降りて、いつもの病棟の廊下を進む。

「すいません開けてください！！！」

もうちょっと頑張りましょうねー！とストレッチャーに乗せられた血まみれになっている人がガラガラ、と運ばれていく。

「渡辺さーん！大丈夫ですよー！」って声が聞こえて隣をとおりすぎて行ったストレッチャーをぱっと振り向く。

顔の周りは血まみれになってしまっているけどよく見ればいつものパーカーを羽織っている。

そんなはず……だって……なべは、明日手術するって……。

足早になべの病室に向かうと、部屋の前の廊下は血だらけになっているのを看護師さんたちが片付けていた。

ベッドはもぬけの殻になっていて、廊下の端に寄せられている点滴のパックには見慣れた親友の名前のシールが貼られていた。

持っていた紙袋はドサッと音を立てて手から離れてく。

紙袋だけじゃなくて色んなものが手から毀れていってしまう、そんな気がした。

それからいろんな看護師さんを捕まえてはなべはどうなったんですか、と聞いたんだけど処置中ですので、としか、教えて貰えずに面会時間が終わった。

明日の夕方また来るわ

手書きのメモと頼まれた化粧水を置いてとぼとぼと部屋を後にした。