靡くほどに美しく壱 (ページ19)

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フラフラとなべの病室を出て、どうしていいか分からないままさっき乗ってきたエレベーターに乗り込む。

なんて言えばいいのかも、どうするのが正解なのかもわかんないまま俺たちらしくない顔をして別れてしまった。

病院の外に出るとモワッと暑い空気が全身を包む。

___今家？

それだけ送ると「いえ」といつもと同じ雑な変事が帰ってきて少しだけ安心する。

何分で行くとか、なんか買ってくとかそんなの全部考えられたくて家にいることに安心してそのままの足でAの家に向かった。

着いたとだけ送れば開けてくれるけど出迎えるAはなんかちょっと心配そうな顔をしてる、気がする。

「LINEきたから来るとは思ったけどたつが手ぶらなんて珍しいじゃん」

珍しいというか、多分始めてだ。ここに来る時は毎回2人で飲むためのお酒とつまみ、それからAの好きなアイスを買ってきている。……高いやつ。小さくて高い、あれ。

ご飯を作っていたのかリビングはいい匂いがする。

はい、と差し出されたのはカフェオレ。

いつもならビールを出されるからなんか、分かってんなー。なんて他人事みたいにありがと、と受け取る。

ふわっと口に広がる香りとふかふかのソファに体を沈めたら安心したのかポロポロ涙が溢れてきた。