42話 ページ44
『あっ...』
ぐらりと視界が歪み、内側から細胞が破壊されていく感覚がした。
喉が焼けるように熱くなり耐え切れずに咳き込むと、ぼたぼたと口から血が滴る。
典型的なキャパオーバーの症状だ。
ビルをまるまる一棟、それも様々な物質に対して個性を働かせたことなんて今までなかったから。
こんな時に...！
「A！」
俺の異変にいち早く気付いた勝己が弔達をかわしながら、俺の元へ走ってくるのが掠れる視界の隅で見えた。
勝己と入れ違いで大勢のヒーローが弔達と俺の方へ向かってくる。
このままじゃ全滅だ。
それだけは絶対に避けなくてはいけない。
沈んでいく思考をかき分け頭を必死に働かせ、浮かんだのはたった1つの哀しい方法だった。
『ゲホッ...先生！！みんなを逃して！』
絞り出すような声で叫ぶと交戦中だった先生は、俺の意図に気付いたのか気遣わしげな視線を送る。
いいんだよ、俺は最後まで先生と一緒に戦えて嬉しいんだから。
先生はオールマイトの応戦で俺の声に耳を傾けるので精一杯。
こちらまで個性を伸ばすことは不可能だ。
俺は一瞬でも隙を作ろうと、先生や弔達に攻撃をしようとしているヒーローのいる一帯の地面を個性を使って崩す。
個性を使ったことで、頭がガンガンと鈍器で殴りつけられたように痛んで苦しさにえずく。ヒューヒューと喉の奥から空気が漏れる音が聞こえる。
一瞬オールマイトから離れた先生が、マグ姐と黒霧さんの個性を強制的に解放させたお影で、みんなワープゲートに引き寄せられていく。
ヒーロー達とともに崩れゆく足場を、寸前爆破で飛び越えた勝己は一直線にこちらへ向かって来る。
俺にはそれを振り切る力はもう残っていない。
「やめろ！これ以上個性を使うな！！」
勝己が俺に向かって叫ぶ。
どうして俺にそんなに必死になるの？
俺のこと要らなくなったから捨てたんだろ？
勝己が何を考えていたのか最後まで分からなかったな。
「ダメだ先生！！A！！！」
弔が俺の名を叫ぶ声が、やけに鮮明に届いた。
靄がかっていく意識の中で、弔がこちらに向かって手を伸ばしているのが見える。
よかった、これで弔達は助かるんだ。
これが正解だった、これでよかったんだ。
なのに、どうして、
『弔...俺を、置いていかないで』
「A！！！」
置いていかないで欲しい。
一人は怖い。
届かないことは分かっていたけれど、目一杯手を伸ばす。
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小林くるみ - 主夢さんは女の子なんですか？ (2019年2月24日 19時) (
レス) id: fcdc749e3e (このIDを非表示/違反報告)
茜霧島(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張って下さい！ (2018年8月10日 23時) (レス) id: 299baa62bd (このIDを非表示/違反報告)
輝来-きら-(プロフ) - わー！ありがとうございます！！これからも楽しく読ませて頂きます！！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: 5db744124f (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 朔さん» はじめまして！パスワード限定を解除させていただいたのでよかったらご覧ください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 茜霧島さん» 茜霧島さんいつもコメントありがとうございます！新しく小説を作成するため非公開にしていましたが解除しましたので良かったら読んでやってください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧*konpeki | 作成日時：2017年7月16日 10時
