35話 ページ37
先日までの賑やかさが嘘のように静まりかえったバーに、乾いた紙の音だけが虚しく響いていた。
俺の手に握られた数枚の写真には、どれも爆豪勝己の姿が収められていた。
ヴィラン連合の皆は俺と弔以外開闢行動隊として、勝己誘拐のために目的地へ向かった。
"内通者"のよこした情報を頼りに今頃皆、雄英生徒たちが合宿を行っているキャンプに辿りついたところだろう。
Mr.コンプレスの前では勝己の個性は無力に等しいだろうし、たとえ雄英生であろうと遅れをとらないであろう精鋭を集めたつもりだ。
きっと彼らは目的をし果せるだろう。
爆豪勝己がヴィラン連合に来る。
かつての俺には恐ろしくて仕方がなかっただろう。けれど、
俺の心は不思議なほど落ち着いていた。
『なぁ、弔？』
「なんだ」
隣の椅子に座って俺を見つめていた弔に声をかける。
『俺たちが出会った時のこと、覚えてる？』
「もちろんだ。忘れるわけない。
俺はあの時からお前を俺のものにしたいと思ってたんだ。」
『嬉しいな。
俺はあの時弔のこと神様だと思ったんだ。
俺を分かってくれて認めてくれて、俺を好きだって、ここに居ていいって言ってくれて。
本当に幸せだった。
俺は今幸せなんだ。
だから弱いままの俺は捨てる。
俺の居場所を守るために、みんなを守るために。
弱いかつての俺を殺すよ。
だから...』
弔の真っ赤な燃えるような目で見つめられる。
すべてを見透かすような瞳に何を言っても許される気がした。
『だから、俺を認めて。
俺を愛して。
俺がいなきゃダメだって、俺じゃなきゃダメだって。
言葉で、行動で、
教えて。』
「ほんっとうに、お前は最高だよA」
ニヤリと口元を歪ませて笑った弔は、手を伸ばしてするりと俺の頬を撫でた。
そっと俺の顔に口を近づけた弔。
息遣いが耳に届くほどの距離。
彼の低く響く声が耳元で聞こえた。
「そんなお前が好きだ。」
ゾクゾクと背筋が歓喜に震えた。
俺の存在が満たされていくのを感じる。
あぁ、俺はここに居る。存在しているのだ。
かつての自分では感じることのできなかった存在意義をここでは十二分に実感できる。
俺の居場所はここにしかないんだ。
幸せの余韻を噛み締めているとワープゲートが開く。
「ほら、今日の主人公のお出ましだ。続きはまた今度な。」
かつての俺が求めた彼。けれどそんな俺は、もう
居ない。
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小林くるみ - 主夢さんは女の子なんですか？ (2019年2月24日 19時) (
レス) id: fcdc749e3e (このIDを非表示/違反報告)
茜霧島(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張って下さい！ (2018年8月10日 23時) (レス) id: 299baa62bd (このIDを非表示/違反報告)
輝来-きら-(プロフ) - わー！ありがとうございます！！これからも楽しく読ませて頂きます！！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: 5db744124f (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 朔さん» はじめまして！パスワード限定を解除させていただいたのでよかったらご覧ください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 茜霧島さん» 茜霧島さんいつもコメントありがとうございます！新しく小説を作成するため非公開にしていましたが解除しましたので良かったら読んでやってください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧*konpeki | 作成日時：2017年7月16日 10時
