31話 ページ33
体育祭が終わり、自分の個性とについての考えが大きく変わった。
ヒーローになっても良いのだと母は言っていた。
肯定されたい。
母を支えたい。
けれど肝心な一歩が踏み出せないままでいた。
物思いにふけりながら帰路を歩いていると前方に見覚えのある顔が見えた。
あれは、間違いない。
「A、」
あちらも驚いたようにこちらを見ていた。
『轟...焦凍』
名前を覚えてくれていた。ただそれだけのことなのにひどく喜んでいる自分に驚く。
目が合ったがAは逃げることなく距離を詰めてきた。
『この間ぶりだな。生憎今日はこの後予定が入っているからごたごたはご免なんだ。仲よくしよう』
ヴィランがいると警察でも呼ぶと思ったのだろう。そう言って握手を求めてくるA。
握ったその手は、存外暖かかった。
『なんだかこうしていると本当に友達になったみたいだな。』
ふっと笑ったその顔が年相応の幼さを含んでいたので、Aがヴィランだという事実も忘れてただただ、綺麗だ、と思った。
だからだろうか、体育祭が終わってからずっと心の中で渦巻いていた疑問がするりと口から滑り落ちた。
「なあ、A。
もしお前が、自分のせいで大切な人を傷つけてしまったらどうする？」
『ヴィランに相談事？変わってるな。』
驚いた顔のAもやはり綺麗だった。
自分でも敵相手にこんな質問をするなんて馬鹿げているとは思ったが、Aの表情や纏っている空気があまりにも優しく何処となく俺と近いものを感じたので彼の答えを待った。
『まあそうだな...
何か伝えたいことがあるなら伝えられるうちに言った方がいい。
いつでも伝えられるって胡坐かいてるうちに、気づいたらもう二度と声も手も届かないところにいるんだ。そのころになって後悔してももう手遅れ。
なんてこともあるかもしれないしな。』
そう明るく答えたAの表情は声色とは違って、なぜだかとても悲しそうに見えた。
「…A、それは誰の．．．」
『役に立てたか？
俺はそろそろ時間なんで帰らせてもらう。』
握ったままだった手をパッと離されると、先ほどまでの悲しげな影はどこにも見当たらなかった。
『じゃあ、”またな”』
引き止めたかったが伸ばした手は彼に届かなかった。
俺は、Aの背中が人混みに紛れて見えなくなるまで見つめていた。
俺はAと別れたその足で病院へ向かう。
後悔のないように...
「母さん」
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小林くるみ - 主夢さんは女の子なんですか？ (2019年2月24日 19時) (
レス) id: fcdc749e3e (このIDを非表示/違反報告)
茜霧島(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張って下さい！ (2018年8月10日 23時) (レス) id: 299baa62bd (このIDを非表示/違反報告)
輝来-きら-(プロフ) - わー！ありがとうございます！！これからも楽しく読ませて頂きます！！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: 5db744124f (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 朔さん» はじめまして！パスワード限定を解除させていただいたのでよかったらご覧ください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 茜霧島さん» 茜霧島さんいつもコメントありがとうございます！新しく小説を作成するため非公開にしていましたが解除しましたので良かったら読んでやってください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧*konpeki | 作成日時：2017年7月16日 10時
