29話 ページ31
記憶の中のAはいつだって俺の隣にいた。
俺がそうなるように仕向けていたのもあるが、あいつは物心つく頃には俺のことが大好きだったから。
公園で1人で遊んでいたAに「友達になってやるよ」と上から目線で声をかけた。
公園の隅でうずくまる小さな背中と、年に似合わない何処かあきらめたような憂いを含んだ表情になぜか惹かれ、こいつのことを知りたいと思ったから。
引っ込み思案で人見知りが激しかったAだが、俺にだけはなぜかよく懐いた。
「かっちゃんの個性はヒーロ向きだし派手でかっこいいよね。」
世辞もなく心からの言葉をいつも告げ、あいつは常に俺の隣で俺を肯定していた。
Aを大切に思うには時間はかからなかった。
内気で常に暗い表情をしていたAだったが、俺とデクの前だけはよく笑っていた。
俺だけに笑いかければいいものを、デクにまでそんな顔を向けるものだから苛立って俺はよくデクに強く当たっていた。
そんなデクをAは庇うものだから、余計に腹が立った。
その時の俺は自分の所有物が取られたようで悔しいんだと思っていたがきっと違う。
その頃にはもう俺はAが愛おしいと。好きだと思っていたのだと今ならわかる。
大切だった。何よりも。
Aが消えた時から、あいつのことを思い出さない日は無かった。
あの日あいつと最後にした会話を思い出し、何度自分を殴りつけたくなったか分からない。
最後に見たAの苦しそうな表情が脳裏に焼き付いて離れない。
誰よりも、何よりも大切だったのに、それを自らの手で壊したのだ。
閉じ込められ不自由を強いられるAの姿が何度も浮かんでは消えていった。自分の無力さに気が狂いそうだった。ただただ後悔していた。
Aを見つけて救うことが俺を突き動かす一番の原動力だった。何処にいるのか、それこそ生死すらも分からなかったけれど、
怒りを発散させるかのように勝ち取った体育祭での優勝だったが、それは１つも俺の心を晴らさなかった。
A、
お前を必ず
連れ戻す。
きっとそれが俺の償いだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 967人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小林くるみ - 主夢さんは女の子なんですか？ (2019年2月24日 19時) (
レス) id: fcdc749e3e (このIDを非表示/違反報告)
茜霧島(プロフ) - ありがとうございます！これからも頑張って下さい！ (2018年8月10日 23時) (レス) id: 299baa62bd (このIDを非表示/違反報告)
輝来-きら-(プロフ) - わー！ありがとうございます！！これからも楽しく読ませて頂きます！！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: 5db744124f (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 朔さん» はじめまして！パスワード限定を解除させていただいたのでよかったらご覧ください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
紺碧(プロフ) - 茜霧島さん» 茜霧島さんいつもコメントありがとうございます！新しく小説を作成するため非公開にしていましたが解除しましたので良かったら読んでやってください！ (2018年8月10日 20時) (レス) id: a7b92d1ea5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紺碧*konpeki | 作成日時：2017年7月16日 10時
