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資料を取りに行こうとしているんだろうか、山本くんがデスクから立ち上がる。どこか体を引きずっているように見えて。
勿論、彼が困っているなら助けたい。でも、彼が何をされているのか、何に苦しんでいるのかなんて、本当のことは本人に聞かないと分からない。だから無理に動くことは困難だった。
早急に言って警戒されるようなことも避けた方が良いという全員の意見。彼が口を閉ざしてしまえば、誰も何も分からなくなるから。
こう「山本さん！これしましょ！」
山本「い”っ....」
不意に、そんな呻き声がした。発信源は山本くんで、その側に渡辺くんが不安そうに立ち尽くしていて。当然の如く、福良さんは渡辺くんにも事情を話している。QuizKnockの中でも親友のように仲が良い彼も知っていた方が、変化に気づきやすいと思った。
どうやら、先日に撮影で使ったカードゲームをしようと渡辺くんが山本くんに抱きついたようだ。山本くんは目を瞑り、一瞬顔を歪める。
こう「山本さん....？」
山本「ぁ、大丈夫大丈夫。急に来たもんだからびっくりしちゃった。それで、何するの？」
それでも平然と笑顔を繕い、何もないというように彼はゲームを始める。渡辺くんも困惑しているようだったが悟られてはいけない為、ノリノリの演技をして一緒にゲームをしていた。
そこで、携帯の通知音が鳴る。オフィス内を見渡せば持ち主は山本くん。また顔を歪めていたのを見て、伊沢さんが声を掛けようと立ち上がった。
が、しかし。
山本「....ネタ探し行ってきます」
決して元気とは言えない、脱力しきった声が聞こえたのと同時に、山本くんは扉の向こうへ消えていった。伊沢さんは深い溜め息を吐き、デスクにまた座り直す。
須貝「....絶対、何かあるな」
暗い雰囲気の室内に、須貝さんの少し大きめな声が響く。全員が少し顔をあげ、また俯いた。
こう「山本さん、痛かったですかね....」
福良「痛いだろうね」
川上「あそこまでの呻き声ってことは、もう相当痛い筈です。我慢出来ないぐらい」
こう「お、俺....」
二人の言葉を聞いて、渡辺くんの目は不安そうにだんだんと潤んでいく。
河村「でもこうちゃんが抱きつかなかったら、山本が腕を痛そうにしていることに気づけなかったと思うよ」
伊沢「明日、山本に聞いてみよう」
伊沢さんが言い終わり、各々首を縦に振る。こうするしかない、もっと可能性を見出だすべきなのに、そんなことも出来ないことがもどかしくて。軽く溜め息を溢し、いつもより強めにキーボードを叩いた。
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