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桜舞の手にはプレゼントが一つ。それを須貝さんに渡し、彼女は俺の下へ来た。すっげー申し訳なさそうだったもんだから何事かと思っていると、急に頭を下げられる。
『すみません、伊沢さん』
伊沢「え、あの、どした？」
『....プレゼント、なくしました』
顔が見えない状態でそう言われ、俺もメンバーも呆然とした。いや、プレゼントがないことに驚いてる訳じゃなくて、なくしたことに驚いている。いつもいつも完璧な彼女が自分の荷物を、それも人に渡すプレゼントを、こいつが紛失してしまうとはどうしても思えない。
絶対なんかおかしい。そう感じてはいたものの、先ずは目の前でずっと頭を下げ続ける桜舞をなんとかしないとなぁと思い、出来るだけ優しく声を掛けた。
伊沢「桜舞もういいから、顔あげな？」
『本当にすみません....』
消え入るような声で言われ、対応に困った。俺の経験上、彼女が項垂れた状態になった時に言葉にした内容は誰がなんと言おうと実行する。今回もありそうなので発言させないようにした。
というか、多分みんなも彼女の異変に気づいてるんだと思う。なくしたって言った瞬間に目つきが変わったもんね。「桜舞ならそんなことしない」みたいな感じで。
川上「持ってきたのは確かなん？」
『昨日ちゃんと鞄の中に入れたんだ』
須貝「ないとおかしいわな」
福良「今日は大学行ったの？」
山本「大学に置いてきた説？」
『大学は行ったんですけど、分からないんです。今日異様に人が多かったので....』
河村「ずっと鞄に入れてたんなら出してないんだから置いてくる可能性は低いでしょ」
こう「じゃあ何処へ？」
こうちゃんの言葉を最後に、室内は静まり返る。鞄に入れたものが勝手に外へ出るとは思えない。まぁプレゼントに足が生えて勝手に歩いて行ったと言うなら話は別だが、そんな非現実的なことが起こるとは考え難いし。
脳内であらゆる可能性を見出だしていると
『あの、もう良いです。また別に用意しますし、僕の注意不足ですし。後日でも大丈夫ですか？』
伊沢「あ、うん。あのさ、別に用意してくれなくても良いぞ？こうして祝ってくれたことだけでも嬉しかったし。気持ちだけで充分」
『ですが....』
嗚呼、そうだった。絶対に聞かないんだったわ。俺が今言ったことに嘘はないんだけど、それでも用意するって言い張るだろうな〜。現に今、言うこと聞かなそうだし。
そう思った時、一つの考えが浮かんだ。
これなら聞いてくれるかな。
伊沢「俺やっぱプレゼント要らない」
＿＿＿＿代わりに、桜舞の時間をくれ
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