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今までにも、不安を感じたことはあった。その度に、何度も何度も解決して、乗り越えてきた。でも今回は少し違う。本能的な勘だけど、なにか、なにかあるように感じた。
Aが、消えてしまいそうな気がして
『ん、なに』
気づけば、抱き締めていた。
川上「....なんかあるんやったら、絶対一人で抱え込むな。相談して。いざというときはみんな心強い味方やから。まぁ今はあんなんやけど」
もう6年前のようなAは見たくないから。
『....ねぇ、たくろう』
川上「ん？」
『もうちょっと、このままで』
川上「....ええよ」
『ありがと』
腕の中で、Aは震えている。人には話したくないことの一つや二つ、当たり前にあるだろう。Aの場合、その内容があまりにも膨大で深刻なものばかりだ。彼女が言いたくないなら、俺は話してくれるまで待つしかない訳で。今はこうする他方法がない。
暫くそうしていると、下から静かに寝息が聞こえてくる。少し体を離してみれば、Aは眠っていた。そのままゆっくりソファに寝かせ、仮眠室から毛布を取ってきて掛ける。いつの間にか寝てしまっていた伊沢さん達にも掛けて、俺も空いている場所に座った。
ふと横に視線を向けると、綺麗に整理整頓されているAのデスクが視界に入る。その上には、完璧に纏められたこの会社で使う書類と資料が。しかもかなりの量だった。一人でこなすものとは思えないぐらいの。どうせ伊沢さん達の言うことも聞かんと終わらせたんやろう。あとこれ今日のやから、苛々しながらやってたやつやし。
少し離れた場所で寝息を立てるAを一瞥し、尊敬の念を送る。茅野といいAといい、あの家で育った人間は人造人間レベルまで天才になりそうだ。まぁ、あれは多分才能やと思うけど。
....それにしても、あれはなんだったんだろうか。飲み会に参加することは二つ返事だったし、警戒心が強いわりに酒ではすぐ酔ったり。しかも急に抱き締められて抵抗しなかったし。明らかに変な態度ばかりだ。
あの言葉も、なんか違和感あるし。
色々な思考を巡らせていると、俺にもだんだんと睡魔が襲ってきて。片づけは起きてからするか、と脳内で呟きながら意識を落とした。
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