。 ページ17
そして1時間程が経った頃。不意に横を見れば、いつになくぼーっとした様子のAがソファの背に深く凭れていて。彼女の前には空にされた缶が3、4本並んでいた。顔を赤く染めたAに少しドキッとしたのは気の所為だ、多分。
初めてなのかは知らんが急にこの量のアルコールを体に入れるのは流石にキツいだろうと判断し、頭に響かない程度で声を掛けながら軽く揺する。
川上「A、もう止めといたら？」
『ん、』
川上「言われてから飲むな」
『だいじょぶ、だから』
川上「どこがだよ」
実を言うと、Aの外見は顔が赤いこと以外で特に変化が見られない。普段もこれぐらい無言だし、黙って酒を煽っていても何も言われない程。しかし実際、こいつは既に限界へ到達しており、いつもよりは呂律も回らないようになっている。まぁ全く喋らんから気づきにくいんやけど。
大丈夫だと言う奴を取り敢えず無視しその手から缶を離させて代わりに水を渡した。これに関しては誰かさん達と違い、自分から素直に飲んでくれて助かったのだが。こういう時ぐらいは迷惑掛けたら良いのに、とも思う。
それと、おそらくもうみんな忘れているであろうこの飲み会が開かれた理由である、本来の目的を聞いてみた。
因みに、発案者の山本とこうちゃんは既に眠っているし、Ｐコンビはめっちゃ酔ってる上、他の人に悪絡みしている。あとの2人も相当酔っているけど、山森さんは知らない間に帰っていた。
川上「....A、最近どう」
『どうって、なに』
川上「だからその....苛ついてたやん、今日」
『....ごめん』
川上「いや謝ってほしい訳じゃなくて。あのさ、もうちょっと、俺らに頼れよ。これでも一応同じ職場で働いて、これまで色々頑張ってきたやん。だからなんかあったなら、もっと、頼ってくれ」
酒の影響か、普段は絶対に言わないような言葉を次々発する。俺も相当酔ってるんやなぁとか考えつつ、Aの反応を窺った。
『たくろー....』
川上「ん、どした？」
『＿＿に＿＿＿が＿＿＿＿い』
川上「え？なんて？」
『だーかーらー、』
＿＿＿＿僕には、時間がないんだ。
静かに、でもはっきりと、Aはそう言った。よく分からなくて、お互いに酒が入ってるから、酔っている訳だ。あまり働かなくなっている脳をフル回転させながら言葉の意味を考える。
その時の湿った声と、悲しそうに微笑んだ姿が、頭の中から離れない。いつもならAの笑顔が見れて安心する筈なのに、今は何故か胸に苦しみを覚えて。息が、詰まりそうだった。
同時に、原因不明の不安が俺を襲う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
