桜舞、お酒を飲む ページ14
今隣で机に突っ伏しているこいつは、一体どうしたというんだろうか。顔を赤く染め、生きているのか確認の為に触れた背中は熱い。その姿にメンバーは驚くなり心配なり呆れなり。色々な表情を見せていた。
普段は完璧で感情があまり表に出ない彼女が、なぜ今こうなっているのかと言うと、
＿＿＿＿時は、半日前に遡る。
・
・
事の発端は、茅野からのメールだった。
茅野«拝啓、川上様。この度、弊社『桜舞グループ』は明日・明後日と社全体の定例会議があり、従業員は京都に向かわなくてはなりません。誠に突然であり勝手ながら、この期間中のA様をお願いできませんでしょうか。又、直接ではなくこのような方法を取りましたこと、改めて謝罪致します。
敬具、茅野 楓»
川上「とのことなんですが」
伊沢「あぁ、それ俺のところにも来たよ」
やけに丁寧で長々した文を送ってきた上に改めて謝罪文を送信してきて。茅野は本当に根っからの執事なんだと尊敬の念を送る。毎回こんなものを作って送っているなんて、俺にはとてもじゃないけど出来る気がしない。
それは伊沢さんの方にも送信されていたらしく、自慢気に画面を見せられた。俺にも送られてきているんだからなんの自慢にもならないんだが。
そして案の定、Aは2日分の着替えを持ち、不機嫌そうにしながら出勤してきた。おそらく、茅野と論争して負けでもしたんだろう。その所為なのか、いつもより仕事が厳しく量も多かった。心なしか溜め息も多い。
その珍しい姿にメンバーは首を傾げ、伊沢さんもよく分からないという表情で。ただ茅野に言い負けただけではこんな風に苛つかないだろう。最早苛ついているのかも判断出来ないぐらい、感情が読めない。今日は特にだ。
川上「....倒れる前に規制かけろよ」
『ん、』
山本「ほんとに分かってます？」
『ん、』
こう「お昼なに食べますか？」
『ん、』
川上「A！」
『ｯもう何!?』
急に声を荒げたことにより周囲は驚き、Aはそのままパソコンを持って執務室を出ていった。あいつらしくない、本当にどうしたのかとみんなは心配の色を見せ始めて。この中で一番長くいる俺に次々と質問が飛んできた。
まぁ実を言うと、俺にも分かっていない。普段も完璧なAに、一体なにがあったんだろうか。
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