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目を覚ました時、俺は仮眠室にいた。部屋の電気は消えていて、まわりでは桜舞さん以外の皆さんが眠っている。
あの後、泣き疲れて寝てしまったらしい。俺の手首は包帯が綺麗に巻き直されていた。
顔を洗ってこようと起き上がって部屋を出る。戻っても寝ている邪魔になるかもしれないから撮影室へ入った。
自分のデスクに座った。不意に見つけたぺんたてのカッター。ダメだと分かっているのに、ゆっくりそれに手を伸ばし、包帯を外して切った。
折角治療してくれたのに。迷惑なんだろうな、俺なんて....。やっぱりあの時死んだ方が良かったんじゃないか、そんな考えで頭の中を埋め尽くされていく。
こう「なんで....」
何で俺はこんなにも弱いんだ。皆さんはアンチなんて全く気にしてないのに。俺は....
『弱くない』
振り返ると、入り口に桜舞さんが立っていた。俺の手首を見て、救急箱を持ってきて隣に座る。
『こうちゃんは、弱くなんてない。頑張ったよ。一人でアンチのこと抱え込んで、強いよ』
また泣きそうになる。手際よく手当てをしてくれる桜舞さんは泣いてる俺に大丈夫と言い続けてくれた。
治療が終わった後、桜舞さんは俺の前に屈み、手を取る。その顔はいつにもまして真剣だ。
『でも、自分を傷つけるのは違うと思う。死を選んだことも、それに関しては誤答だよ。みんないるでしょ?今回のこと、本気でこうちゃんのこと心配してたよ』
俺のことを、皆さんが....?
『こうちゃん、相談して。次からは切る前と切った後、ちゃんと言って。そしたらまた話聞くから、それぐらいなら出来るから』
約束、と小指を出してくる。普段の彼女からは全然想像がつかないような行動だったけど、俺はゆっくり小指を出して、約束を交わした。
それからというもの、何かと気にかけてくれて、俺はリスカの頻度が減っていった。たまに切っちゃうこともあるけど、その時は皆さんが話を聞いてくれた。
思えばあの時、桜舞さんが止めてくれなかったら、もう俺はここにいなかったかもしれない。だから、気づいて助けてくれたことを感謝してる。
最初は苦手だったけど、今は優しくて普段とは違う一面を持つ貴女が好きです。
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ーーーーー桜舞さんは俺が苦手“だった”、変化に気づきやすい完璧すぎる先輩です!
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