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須貝「あれ、明らかに正常な顔色じゃないよね？」
不意に須貝さんが言った言葉。顔が向いているその方向を見ると、桜舞ちゃんの姿があった。ひたすらパソコンの画面を見ながらタイピングを続けている。
寝ていないのか、目の下はくっきりとついた濃い隈があるし、顔が青白い。オフィスで彼女がご飯を食べている姿を見たことはないから、ちゃんと食べているのか分からないし。
福良「体調悪いんですかね？」
須貝「本人は何も言ってこんけど」
伊沢や川上が見たら怒るんだろうなと思ってデスクから立ち上がる。桜舞ちゃんは俺が横へ行ってもパソコンから目を離さなかった。何かを唱えて仕事をしている。
川上「おはようございます」
そこへ川上が出勤してきた。桜舞ちゃんの顔を見るなり、呆れたように溜め息を吐いて自分のデスクで荷物を降ろして彼女に近寄った。
川上「A、ちょっとは寝た？」
反応はなく、ずっとパソコンを見ている。川上には彼女が唱えている言葉が聞こえたのか、少し驚いている様子だった。俺も近づいて見る。
『完璧にしなきゃ....もっと完璧に....もっと....』
完璧に、ひたすらそう唱えていた。
ずっと考えていたことがある。何故彼女は常日頃から完璧なのか、自分を犠牲にしてまで完璧を求めるのか。彼女をそこまで突き動かす物があるってことなのかな？
川上「A！しっかりしろ！」
色んな思考が頭の中に渦巻いていた時、急に川上が怒鳴った。その声に驚いた須貝さんは持っていたスマホを落とすぐらい。川上がこんなに大きな声を出したのは初めてだった。
川上に怒鳴られて我に返った桜舞ちゃんは、川上を見て瞬きを繰り返している。
川上「もう良いから、続き俺がやっとくから、茅野に連絡してもう帰れ」
『でも....』
川上「あかん。俺が連絡しとくから、もう帰りな」
『....ごめん』
川上は桜舞ちゃんを帰し、須貝さんに頭を下げてから続きの仕事を始めた。
訳ありなのか、その時は聞けなかった。川上があまりにも悲しそうで苦しそうな顔をしてたから。
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