潤んだ月と抱擁。-SK- (Another STORY) (ページ6)

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『わぁ美味しそう！いただきますっ』

加藤｢いただきます。｣

ふたり向かい合う席に座って両手を合わせる。

小さな皿にポトフの具をよそうたび、
湯気がもわりと立ち込め食欲をそそる。

彼女は箸を器用に使って
じゃがいもをまっぷたつに割り、

ふーふーと息を吹きかけ
火傷しない程度に冷ましてから口の中へ放った。

『あっふ、っ！(熱い)』

加藤｢ふふ笑｣

『うんっ、うん！ほいひいｯ、！！』

加藤｢そりゃあよかった。
…ほんと美味そうに食うよなぁ笑｣

『んふふ笑お出汁が沁みてる〜♪』

ポトフのつゆを"出汁"と呼ぶか？"スープ"と呼ぶか？

そんなのはどうでもいいんだけど。

コンソメキューブは
簡単で時短になるし、何に入れても美味い。

麺つゆくらい万能だ。

隠し味にしてもいい。
野菜の甘みが溶け込んでていいダシが出る。

…ってワシも出汁って言うとるやないかい。

『ん？どしたの？』

加藤｢なんでもない。｣

あっぶね、つい笑っちまうとこだった。

いやもう半分顔に出とるがな。

『ポトフに合わせるのってご飯？パン？』

加藤｢パンじゃないの？洋食の部類だろ。｣

『こんなお洒落なバケットの食べ方した事ない』

加藤｢トマトのブルスケッタな。｣

『サックサク。酸味があって美味しい。』

加藤｢バルサミコ酢を消費したかったのよ｣

『お。これがバルサミコ酢の味かぁ。』

加藤｢おまえ、笑｣

『いやぁわからんのよ！笑中々買わないじゃん？
料理もそんな頻繁にしないからさ。』

加藤｢んー、そういうもんか？｣

『買わないよ。大っきいの持て余しちゃう。』

加藤｢確かになぁ。もっと小せぇボトルで売って欲しいよな。だから消費に勤しんでるわけだし。｣

『シゲさんはそれをどう料理するかも楽しんでるから凄いよね。主婦の鏡だ。』

加藤｢えぇー、しゅふかよ…笑｣

『…あー、じゃあ"シェフ"の鏡だ。！笑』

加藤｢誰が上手いこと言えと。何気に韻踏んでるし。｣

『美味しいおいしい。もぐもぐしちゃう。』

加藤｢あ、ティッシュとって｣

『はーい』

元から家族だったかのような温かい空気。
俺は彼女と囲む食卓が好きだったりする。

実家みたいとかではなく、

恋人が、いやむしろ新婚の夫婦が
新しく家庭を築いていく過程を彷彿とさせる、
未来を見据えたくなる団欒の纒があった。

都内じゃなくていいから一軒家を買いたい。
小さな庭があって、犬を飼って
子供は

…って俺は一体何を考えているんだ。笑