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加藤｢A。｣
パチリと音鳴るキーボードの手を止める。
呼んだら帰ってこいって言ったのに…
どこ行った？
過去？未来？
うわ、何十ページも先に居るじゃん。
まってくれ、
それ以上進まれると苦しい場面が続く、、。
お前、俺と同じくらい
センシティブなんだから控えろよ、
結末知ってんだろ
コイツらに感情移入したって、
お前が辛くなるだけなんだから
そうなる前に助けてやらなきゃ。
紛れ込んでいるであろう数列をカッティングし、
メモアプリにペーストして閉じ込める。
あぁこらこら。逃げ回るんじゃない。
"あの子"の3文字捕まえるだけで
どんだけマウス動かしゃ気が済むんだ？
ほら、捕まえた。
加藤｢A。戻ってこい。｣
『…でも、でも、っ！』
加藤｢わかったから。わかってるから。｣
『……うん、、…ごめんなさい』
加藤｢いや、…どうにか2人の仲が引き裂かれないように
頑張ってくれたんだよな。
…嬉しかったよ、ありがとう。｣
『っ、』
加藤｢…大丈夫だから。ね。
俺がちゃんと2人を最後に導くから。｣
『うんっ、ッ』
他人に愛情を抱いて、苦しげに涙をこぼす。
俺はそれを抱き寄せて、
優しく頭を撫でてやるんだ。
壊れてしまわないように、やさしく、やさしく。
こんな危険なこと させたかった訳じゃない。
この子がこの世界に行きたいと言い出したんだ。
キミはこの物語の登場人物じゃないのに。
書き始めた物語は変えられないのに。
それでも彼女は何かを知り得たかのように
彼らのことを褒めて、笑って、
体感した出来事を嬉しそうに報告してくれた。
甘くて美味しかったとか、
レイジの演技は迫力があって感動したとか、
田尾の落としたおしぼりを拾って
クリーニング店に届けようと
渋谷の街を全力で走ったからめっちゃ疲れた、とか。
笑っちゃうよな
俺の作った世界を
こんな楽しそうに走り回られちゃ。
可笑しくもなるよ
オカシクナル
･
手につかない白紙の画面を眺める。
それを覗き込むように、彼女が見つめる。
テーブルの下で、ぎゅっと手を繋いだ。
『…私が行こうか、？』
加藤｢ううん。"まだ"いい。｣
『冒頭だけでも見つけに行きたい。』
加藤｢舞台背景は決まってる。
ただあと一歩、踏み出せないだけ。｣
『その物語に、わたしはいる、？』
加藤｢…｣
ずっとここに居てくれてよかった はずのに
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作者名：白うさぎ | 作成日時：2022年11月29日 15時
