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加藤｢っ、！｣
『？どしたの』
いつぶりかに正門から連絡が来て
呼吸が一瞬止まった。
正門(今、グローブ座で主演の舞台をしています。
もし良かったら来てください。
精一杯ゴッホ演じてます！)
加藤｢…なんだ、舞台の見学か、｣
てっきり｢返せ｣って言われるかと思った。
いやこの子はモノじゃねぇんだけど、さ。
ちょっと、怖くなったじゃんか、、
『なんかあった、？』
加藤｢ううん。なんでもない。｣
何でもないフリをして携帯を裏返した。
『…そう、ならいいんだけど。』
少し寂しそうな表情をして、彼女はソファを立った。
冷凍庫にアイスでも取りに行くんだろう。
大量の冷凍食品に埋もれて、
魚臭くなってねぇかな。そのアイスクリーム。
どうでもいいことを推察している裏で、
俺は動揺せずにはいられなかった。
今までずっと、目を逸らしていた。
この子は俺ん家に来てから
あまり外に出ていない。
仕事に行っていない。
大阪に帰ってない。
大好きなはずのメンバーに、…会えていない。
不自然なことばかりだろう？
彼女は俺以外の人間と会おうとしないし、
Aぇ! groupのことを口にしようとしない。
それは俺が聞きたくないのと、
彼女がそれを察して話さないでくれているからだ。
この世界に、深神ほたるはいない。
消えた。
というより、元から居なかった。
Aぇ!groupは初めから6人組だった。
だから会う必要も無いし、
連れてかれる心配もない。
…はずだった。
加藤｢なぁ、今日の昼飯何にす｣
『…このピック、誰の、？』
加藤｢え？｣
『ピンク色の、ギターのピック、っ』
本棚の床の隙間から出てきた小さな板を拾う。
それはあの日、正門が落としてった…
って1年も前なのにどっから出てきたそのピック。
加藤｢…俺のだよ。｣
『ちがう、シゲさんは半透明のルリビタキが描かれたやつだもん、』
加藤｢っ、俺のだから。それ戻して。｣
『私これ見たことある、知ってる。なんだっけ、誰が』
加藤｢いいから。そんなのどうでもいいだろ、っ｣
『とても、大切な人だったような』
加藤｢違うから、…頼むから！！……それ。戻して、ｯ｣
『っ！！…そっ…か、だよね、？
…ごめんね、なんでもないよ。……ごめんねっ』
彼女の手がぎゅっと背中にまわる。
温かな体温が包み込んでくる。
『ごめん、なんでもないから、…っ、泣かないで、？』
加藤｢っ…｣
俺はいつから弱くなったのだろう
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作者名：白うさぎ | 作成日時：2022年11月29日 15時
