潤んだ月と抱擁。-SK- (Another STORY) (ページ11)

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(ノックの音)

『シゲさーん。お紅茶入れますか？それとも珈琲？』

加藤｢"壊さないように触れない距離がいる日も"〜♪｣

『あ、歌の練習中？、、お邪魔しましたぁー…』

加藤｢"笑顔の真裏に飛んでいくべき日もある"〜♪｣

書斎兼、DTM機器の揃う机は
大きな本棚を挟んでリビングに通じているから、
どこで歌おうが声が丸聞こえ。

そりゃ誰かに聞かれたくないわけではないし、
迷惑する人もいない。…はずの一人暮らし部屋。

しばらく誰かと住む予定はなかったから
配慮が足りていなかったか、、

って気付くのはあと30分後になるが。

俺はヘッドホンで自分の声を聞きながら
コンサートに向けて声出しをしていた。

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･
･

加藤｢…えっ、どこいった｣

Aがいつものソファに居ない。

テーブルの上のハーブティーは、
湯気は薄らいでいるがまだ温かい。

この場を離れたのはそんなに前じゃないだろう。

"いなくなった"

その言葉が頭をよぎるだけで不安に襲われる。

加藤｢…嘘だろ、｣

冷や汗が背中を伝う。
幸せな日常が急に離れていくみたいな感覚がした。

冷静を装いながら、
部屋の中を探し回った。

リビング、いない。

キッチン、いない。

トイレ、いない。

クローゼットの中、いない。

あ、ベランダ？また夜空見つめてんのかな

加藤｢…いない。｣

探すのも怖くなってソファに腰を下ろす。

あれ、携帯どこいった

まじかよ失くしもん多すぎだろ

あれか？電化製品やたら壊れる月？いま何月？

ちげぇよそれは7月だよ。今は10月だ。

携帯の定位置を辿って、寝室の扉を開けた。

加藤｢……いんじゃん。｣

『…zzZ』

携帯もあったし、Aもいた。

ベッドに寝そべって寝息かいてた。
穏やかな顔して。

加藤｢…うわ、焦ったぁ〜っ、、っ｣

盛大なため息と共にベッドに
上半身をだらりと預ける。

一気に力が抜けて、しばらく動けなかった。

あー、依存してる。わかってる。

そんなんわかってんだよ

いま俺は、この子の存在に助けられている。

スマホにも助けられてる。

クッソ、何がネット依存症だ

お前ら無しでやってられっかよ。

加藤｢でも、まじで良かったぁ…、、、｣

うたた寝する彼女の頬に触れる。

もっと近くに感じてたくて、
上半身を起こしてベッドの上に寝そべった。

あぁもう、睡眠取るつもりじゃなかったのに…

まだ書くべき原稿残ってるのに、

そうだ連載の…

れん、さい…の…