調査官はブラック本丸へ派遣される。 (ページ9)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:19,897 hit

・　　　ページ9

壺から背を向けた縁切は本丸の廊下へ出るであろう扉が開いているのが目についた。

　あ、運んだのか。と、あっさり理解した縁切はその扉へと近づいた。廊下の様子を伺うがなにも誰もいない。

「切人、大広間のほうへ行こう。きっとそこにいる」

「縁切さん、嫌なものを見る予感しかないので目隠ししていってもいいですか」

「ばっさりいかれるな」

「ジョークだよジョーク」

　縁切は周りを警戒しながらも、廊下に出る。そしてふと気付いた。

「なんか、さっきより綺麗になってないか？」

　最近とはいえ、ここはブラック本丸。

　廊下は歩くたびにギシギシといつ底が抜けてもおかしくないような音をたてていたし、障子も襖も切り跡があったり、血が飛び散ったあとだってそこかしこにあった。

　切人も厨から顔を出して、廊下を見た。

「……本当だ、綺麗になってる。というか、僕の目印もなくなってる」

　なんの変哲もない柱にピンクの目立つ紐をくくっておいたのだが、それが切られているでもなく、落ちているでもなく、なくなっている。

　何故そもそも目印をつけたかというと、別の任務で迷ったことがあったのでこうして規模の大きい本丸は迷わないように目印をつけるようになったのだ。

　切人は確かめるように何度も方向を変えてその柱を見ている。

(どっからどうみてもねぇだろうが)

　縁切は嘆息し、切人の服の端を引っ張った。

「行こう。さっさと終わらせる」

　縁切は大広間へと足を向ける、切人もそれに続いた。