調査官はブラック本丸へ派遣される。 (ページ7)

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縁切が急に足を止める。

　何故止まる、と怪訝に思い言葉を投げかけるも、バチンと小気味いい音をたて、手で口を塞がれたせいでその声は出なかった。

「……」

「静かにしろ」

　口を塞ぐにももう少しやり方があったと思う。

　塞ぐというよりも叩くという表現のほうが合いそうだ。むしろビンタされたかと思った。

　不満の視線を縁切に向けるが壁の向こう側を見ているようで視線が交わらない。

　どこを向いてるのかと視線の先をたどれば、厨のあるほうをみているようだ。

　縁切は切人のほうに顔を向けると厨を見ろ、と言わんばかりに顎で促した。
　

　此方から厨は見えるが、厨からは見えないであろう角に身を潜めて、聴覚を研ぎ澄ませた。

「……？」

　とんとん、とんとんとん。

　かたん、かたかた。

　じゅぁぁあああ。

　確かに僅かながら厨からは音がする。

　多分、いやこれは絶対に調理している音だ。

　包丁を使っている音。

　鍋の中のお湯が沸騰して蓋が揺れている音。

　なにかを炒める音。

　どれも、ごく普通の音だ。
　そう、普通の音。

　ここが、ブラック本丸でなかったら、その普通の音が歪に、不気味に思うこともなかった。

「……」

　今度は視線が交わる。

　縁切と切人はどうするかアイコンタクトで承知し死角から出た。

ーー

次はちょろっと(すごく)ぐろかも。