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近侍の部屋にあるひきだしというひきだしをみた。なにも入ってはいなかった。
その辺の近侍の日誌によれば、近侍に添えられるのが多かったのは初期刀の加州清水。外したことはほぼないようだ。
切人のほうを見れば、拾い終わったようで、ベルトに破片の入った袋をひっかけていた。
「切人、この部屋にはもうなにもない」
「拾い終わった、少しは手伝えよ」
「お前が言うかこのやろう、この部屋調べるのサボったくせに」
「……厨はあとにしよう。すごくいやな感じしかしない」
誤魔化しやがったなこいつ、と内心で思いつつ。いやな感じがするのは事実なので、流されといた。
縁切は障子に手をかけた。その手は障子を開く前に切人によっていきなり捕まれる。
「おい、なんの真似だ」
「さっきと外の色が違う」
「色？」
縁切は障子の方を見る。
たしか、この本丸に足を踏み入れた時は濁った曇り空だったはずだ、それが障子は夕日の光が少しだけ洩れでていた。
そして、縁切ははっと息を飲む。
本丸は景趣を変えなければ、天気が変わることはない。朝も、夜も。設定すれば、自動にはなるだろうが、そもそもこの本丸は１ヶ月前から設定はすべて初期化されているので、真っ白な空しか見えないはず。
濁り空が見えるのおかしい。あと変わるのもおかしい。
「執務室か……」
切人は、縁切の手を離す。よく見れば掴んでいた手は利き手とは逆の手で、利き手は刀の柄を掴んでいる。
なにそのギャップ、うちの子かっこよすぎ。
「さすが、我らが隊長。警戒心がお強い」
「照れる」
「照れんな」
「本丸一周でもする？ こんな洒落たことするんだ。もう執務室にはいないだろう」
「そうだな、俺ら以外にも居ることをご丁寧に証明してくれたわけだ。あとはみつけて切るだけだ」
縁切は障子を勢いよく開けた。
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作者名：お清 | 作成日時：2019年5月30日 13時
