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「えぇ……」
「許すまじ審神者め」
近侍の部屋の障子を開ければ、その一体に刀の破片が散らばっている。
中に足を踏み入れ、破片を手に取る。
錆で、表面がざらざらだった。
破片を切人に渡す。険しい顔をさらに険しくさせて切人は破片を見た。
「錆びていてもわかるぞ、この破片は大倶利伽羅様のもの！！」
「そこじゃねぇ、あと単純に見てわかんのがすげぇなおい……じゃなくて」
ここの刀、何振か喰ってる。
「まじか」
審神者の遺体は回収できなかったといっていたが、それもこの調査で見つかるだろうか。まあ、見つけられたとしても。
原型など、とどめてはいないだろうが。
(いや、そもそもカニバってるなんて聞いてない、記されてない)
政府の任務には難易度に級があるのだが、この任務は堕神が登場するのでS級、またはA級に分類される。だがしかし、堕神が人を喰ったなら級はその上、Sが二つつく。
その分、貰える報酬額が、高くなるのだが。
「上も面倒なやつだけこっち回してきやがって、少しは自分たちで片付けろよ」
「仕方ないだろ、自分の利益になることしか率先してやらないやつらだ。……そろそろきれそう」
わかる、それな。
いやほんとまじで。めんどくさいの極み。
というか、切人がキレると上層部のやつらの頭でスイカ割りしそうだ。
(まあ、そんな日は来ないだろうが)
「謀反はおこすなよ。お前、主さんに顔向けできねぇぞ」
「それはやだ」
「いきなり声低くすんなよ」
付き合ってられん、と部屋を見回す。
机の端に伏せられた写真立てが目に入った。近づいて手に取る。
ほんの少しの好奇心と見てもいいのだろうかという罪悪感を感じながらも写真立てを表返した。
「なあ、切人」
「……さっき見た」
吐き捨てるように言った切人は破片を拾っているようで、こちらからは表情を見ることは出来なかった。
写真立ては元通り伏せて置いた。
そこに写っていたのは、笑った審神者と、無理矢理笑みをつくっているであろう刀たち。
前に並ぶ刀たちの脚はあらぬ方向にまがっているのが何本かあるし、顔を見れば目元が青紫色に変色していたり、赤く膨れ上がったりした刀がほとんどであった。
その真ん中で一人笑っている審神者は、誰が見ても歪に見えた。
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作者名：お清 | 作成日時：2019年5月30日 13時
