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不意に加州の手にしていた酒杯がするりと抜け落ちた。持っていた指の形はそのままに、ぱりんと地面に落ちて割れる。
落ちる瞬間を見た縁切は言葉を失い、切人は加州の顔を見た。体の胸の部分が透けて出口へ続く廊下がうっすらと見える。
加州は透けた指で粉々になった酒杯を拾い上げようと試みるも、それは空をきった。
「……ここまでみたい」
「充分ですよ、これで報告書のネタも回収できましたし」
「ネタかよ、まぁ、報告書は面倒だよね」
俺、初期刀だったからそうゆうの全部任されたんだよなぁ、主もひどいよね。
過去を思いだし、虚しくなるも、楽しかったなぁと笑みがこぼれていた。
加州は縁切に目を向けた。
縁切は俯いている。顔をあげる素振りはない。
「顔あげなよ、あんたには感謝してるんだからさ」
「俺が紐をきらなければ、あなたが消えることはなかった」
きゅっと拳を固く握る縁切に、加州は苦笑いを切人は眉を潜めた。
加州はため息を吐いて、縁切に再度顔を上げるように言った。
縁切が顔を上げるのを見て、唇に人差し指をちょん、とつけ、片目をパチリと閉じる。
「いいこと教えたげよっか」
もう一度、近侍部屋に行って。机にある写真立てを見て、きっと変わっているから。
加州はその言葉を最後にふわりと夜の空気に溶けていった。
切人は日本酒の瓶の中身をイッキ飲みして、縁切が顔を上げるのを待った。
ーー
「縁切ってば泣いてるの？」
「泣いてねぇよ……お前はなんでそんな興奮してんだよ」
「さっきの加州様のひ・み・つ(ハート)ポーズ&ウィンクで」
「わかる」
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作者名：お清 | 作成日時：2019年5月30日 13時
