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まだ口中げろ味、と口をハンカチでおさえながら大広間を調べていると、あるお膳が目にはいった。
近づいてみると、お膳の中がからなのが分かった。
もとからはいっていなかったわけではなさそうだ。味噌汁茶碗の味噌のあとがある、間違いなさそうだ。
食べ残したであろうなすびの漬け物をみて、なすびの漬け物嫌いなんだー、へーと現実逃避をした。
いかにも誰か食べましたよ、的な主張が激しいのが目の前にあるこれだ。
しばらくそのお膳を見ていると、縁切が不自然に空いている嘔吐まみれではないほうの縁側の障子が空いているのが目にはいった。
「切人、庭」
「庭？」
不自然に空いてんなぁと言いたげな顔をしてる。
いかにもあっちに行きましたよ、そこから出ましたよ、と聞こえるようだ。
「……行くか」
「そうだね」
大広間からでる。
また、景趣が変わっていた。
まるまるとした月が辺りを照らしている。
もとから夜目がきくとはいえ、明かりがいらないほどだ。縁側に見えた人影に縁切と切人は足を止めた。
人影は切人たちに気づいたのか顔を向けた。
「お、やっと来た」
この本丸の初期刀。加州清光だ。
日本酒を傍らに置き。酒杯を傾けている姿は洋服でも様になっていた。
襲ってくる気配もなく、穢れた気配もない。少し酒気ゆえか、むしろご機嫌そうに見えた。
注げとでもいうかのように日本酒の瓶をこちらへ向けている。
「切人」
「……僕かよ、喜んで」
進んで加州の元へスキップでもしそうな勢いの切人をここがブラック本丸だということを忘れていないだろうか、と言いたげな縁切が見つめた。
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作者名：お清 | 作成日時：2019年5月30日 13時
