第１話「ブラック本丸調査」 ページ1
じゃんけんをした。
「斬るの？」
「斬るの」
ちょきで勝った切人は縁切の三歩程後ろをついてくるようにして本丸の中へと入る。
雑草まみれの庭を進んでいく。池は渇れていて、優雅に水中を泳いでいたであろう鯉の骨が散らばってっている。その中に混ざる鋼に縁切は目を反らした。あとで切人が拾うだろう。
「おーおー、荒れてんなぁ」
「堕ちた刀剣もいる。縁切、先頭頼む」
「はいはい」
そうあしらいながら本丸の戸に手をかける。
が、開かない。
「……蹴り破ろうか？」
「頼むわ」
力仕事は俺の役じゃない。
(べつに、あれくらいできるけど)
切人が戸を蹴り破る音を聞きながら。縁切は一人ごちる。
そして、ぴりり、張り詰めた空気に変わるのを縁切は感じた。おそらく切人も感じているはず、二振とも動じていないのは長年こんな任務をしてきたからだろうか。
(あぁ、本当に)
めんどくさい。
内心で悪態を吐いた縁切は、抜刀し、後ろから斬りかかって来たものを斬り伏せた。
飛びかかってきた勢いで切った肉片というより肉塊がべしゃあという音をたてて転がる。
機動からして短刀だった。
元は綺麗な白であったであろう髪は汚れ乱れていて、白い頬も土で汚れている。細い足は所々膿んであり、透明な液が出ている。
手入れもされずに放置されていたのだろう。
(……五虎退様)
縁切もまた切人ほどではないが刀もとい刀剣男士たちを尊敬している。
だが堕ちた神に敬意を払ってはならない。それは相手の力の源となるものであるから。
「縁切」
「あぁ、今いく」
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作者名：お清 | 作成日時：2019年5月30日 13時
