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202話 「鬼電」 ページ9

朝である。
ゆっくりと瞼を開けばこっちを見ている綺麗なオッドアイ。
頭に触れている温かいのはきっと一郎の掌だろう。眠い。意識が心地よく揺れている。ハンモックで寝てるみたいに。

「もう少し寝るか?」
『……ん』
「そっか。おやすみ」

目を細めて穏やかに笑った一郎。
小さく頷いて再び瞼を閉じた。









すぅすぅと寝息を立てるA。
顔がいいなあなんて思いながら眺めていれば、俺の視界の端に入り込む手帳型のケースに覆われたスマホ。折りたたみ式のそれは今の状態では画面が見えなくなっているが、隙間から画面の点灯を伺える。
この部屋に入ってAが寝付いた直後に着信が入った。彼女を起こすのが忍びなく、勝手にサイレントマナーにしたが、その時に画面に表示されていた文字は「入間銃兎」。続いて三分後に「碧棺左馬刻」。二分後に「入間銃兎」、その一分後に「碧棺左馬刻」………そこから先は俺も眠ったから分からないが、きっと鬼のように着信が入っているのだろう。
………これ、起きたらAが青ざめるやつだな。









結局起きたのは十一時だった。まあ、ベッドにもぐりこんだのも遅かったしね。しかたない。
丁度目を覚ました時に一郎は隣にいなかったが、リビングへ行けば三兄弟が勢ぞろいだったので焦ることもない。緑色が三つと、それぞれの色三つがこちらを向く。

「おはようございます、Aさん」
「おはよ、三郎君」
「お……はよ、A」
『じぃろ〜?なんでこっち向いてくんな……あ、そか。ごめ』
「………ハッ、低脳はこれだから。Aさん傷つけてそんなに楽しいのか?」
「んなわけねえだろ!!」
「じゃあさっさと言えばいいだろ馬鹿!」
「わかってるっての!………A!!」
『はっ、はい?』
「お、俺と……友達になってください!!」
『へ?』

あれ………俺たちってダチじゃなかったの?
え、今までなんだったの?

『お……おう。おう?』
「俺、Aのこと何も知らなかったし……兄ちゃんじゃないからAのことわかんないし……だから友達になってくれるなら、聞いていいだろ?お前の、友達の事」
『………二郎!』

たまらずに抱き着いた。
なんだこの可愛い高校生は。それに………。

『ありがとう、二郎』
「おっ、おう……ど、いたし…まして」
「……童貞が固まってる」
「言うな三郎……二郎頑張れ。負けんな」
『……ありがと』

無意識かもしれないけど、感謝するよ。
俺に、ラベルを貼ってくれて。

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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作戦隊長 | 作者ホームページ:tp://  
作成日時:2019年5月26日 20時

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