178話 「ココアが冷めるまで」 ページ34
『……で、立ち聞きしているそこ二人!』
ガタッとドアの外で音がした。
その後そろそろとドアが開いて苦笑いをする一郎と二郎の姿が。
『いい度胸じゃねえか……え?』
「い、いや〜……お茶飲みたくなったんだけど」
「二郎、カマくせえぞ……というか言い逃れできねえ」
『……言う事は?』
「「どうもすみませんでした」」
仲良く頭を下げた二人。
俺と三郎君が噴き出して笑えば、二人も頭を上げて一緒に笑った。
二郎と三郎君は部屋に戻り、リビングには再び俺と一郎が残った。
彼はソファに座ってラノベを読んでいらっしゃる。俺はと言えば独歩さんにLINEの返信をしていた訳だが、ふと顔を上げるとあるものが目に入った。
『……ONE PIECE』
「ん?……ああ、最新刊まで全部揃ってるぞ」
『すげーな』
色々あったおかげで気づかなかったが、ずらりと背表紙が並んでいるのは壮観だ。
立ち上がって本棚に近寄り、適当な一巻を手に取る。見覚えがある顔が表紙になっているのは違和感しかないが、これが現実である。あーあー、悪い顔しちゃって。
『俺、この世界にいたんだよなあ』
「そっか」
『……驚かねえの?』
「はぁ……あのなぁ、分かるって言ったろ?」
ラノベを閉じて自分の横に置いた一郎は呆れたように笑っている。
いや、言ってたけどそれとこれとは違うだろ。違うはずだろ。
「今のは冗談の言い方じゃねえ、ついでに俺を試してただろ」
『……なーんでバレっかな』
「諦めろよ。俺も諦めっから」
「なんで一郎まで諦めんだよ」
「俺の事も、たぶんAに筒抜けだからだよ」
へらりと笑った一郎。俺も同じようにへらりと笑えただろうか。
見知った悪い顔が印刷されている単行本を本棚に戻しながらソファに帰還した。一郎はというとキッチンに消えて行った。暫くすると湯気を立てるマグカップをふたつもって現れる。甘い匂い……ココアだろうか。
『長話のお供って?』
「コーヒーの方がよかったか?」
『どっちも好き』
「そっか。好みまではわかんねーから、そういうのは直接教えてくれよな」
マグカップを差し出しながら俺の横に座った一郎。
じわりと両の掌があったかい。ちらりと横を覗き見ればフーフーとココアを冷ましている一郎の横顔が見えた。あ、ちびちび飲んでいる。ちょっと可愛いがすぎて小さく笑えば照れたように唇を尖らせてジト目で見てきた。
「……あっついんだよ」
『だな。じゃあ冷めるまで』
話をしようか。大冒険ではないけど、楽しい話。
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マカロニ - 夢野さんとの絡みが凄く楽しみです。どのように知り合うのか…。これからも楽しみにしています。 (2019年5月6日 20時) (レス) id: 9866c7f19c (このIDを非表示/違反報告)
蛇58(プロフ) - 推しってONE PIECEでの推しとかだと思った〜マジびっくり (2019年4月8日 23時) (レス) id: 0dda0db49d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - バイオお好きなんですね……私も大好きです。母がガチ勢です。一章の泣けるぜとあうんから察してましたけどばいおおおお((作者さんと語りたいですアシュリーのぱんつとレオンの尊さとエイダ様の美しさについて。面白いです!!更新頑張ってください! (2019年3月24日 0時) (レス) id: bd41a59bf6 (このIDを非表示/違反報告)
椿 - こ、これからもお体に気をつけて頑張ってください!( *`ω´) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
椿 - も、もう…しゅき、しゅきすぎる………!(語彙力の低下) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
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