176話 「俺も一桁」 ページ32
暫くの無言が流れた。
言うつもりじゃなかった事を言わされてしまった三郎君はきまりが悪そうに参考書をじっと見つめている。
小さな文字で書き込みがいっぱい入った参考書。
『……今、定期テスト前？』
「いえ……でも学期末に向けて勉強しようと」
『うわ、響きが懐かしい』
一学期期末テストだろ？と笑えばコクリと頷かれた。
その頭をわしゃわしゃと撫でる。さっき一郎が撫でたやり方にわざと似せて撫でたつもりだが……まあ、俺は亜種らしいし。似てる似てる。
『ちょっとだけ脳筋の話聞いてよ』
「……根に持ってる？」
『あはは、冗談だっての』
少し拗ねたような三郎の頭をポンポンと軽く叩いて参考書を最初のページに戻した。この参考書、中学校の歴史単元をまとめたもののようで、最初の見開きのページにはアウストラロピテクスだのナウマンゾウだのが簡単なイラスト付きで乗っている。文章量が圧倒的に多い参考書を使っているのは彼の気質か偏差値か。
『脳筋な、なーんにもなかったんだよ。あー……なーんにもなくなったんだよ。全部。だからまず強くなろうと思った。力が強くなれば心も強くなるって思ったんだ。既に脳筋の資質あると思わね？………でもさ、気づいたよ。俺、なーんにもなかった。このまま小学校、中学、高校卒業してもなーんも残らねえ。鎌倉時代とか戦国時代みたいに強けりゃ生きていける時代でもねえしな』
ほれ、と捲って見せたページには織田信長の統治方法、それを引き継いだ豊臣秀吉、掻っ攫った徳川家康の名前。
じっと三郎君がそれを見る。三人の天下人をどう思うかは人それぞれだ。
『だから不良を殴ったその手で因数分解してたし、英単語帳捲りながら隣の学校の先輩ぶん殴ってた。鉄パイプを教科書でガードしたら教科書が破れたこともある』
「ちょ、最後のは間違いなく脳筋！」
『あ、バレた？……でもさ、脳みそなきゃ生きて行けねえって漠然的に気づけたんだ。そりゃあ数学滅べとか、平安時代は古典と共に消えろとか、公用語日本語になんねーかなとか思ったことあるけど』
「言ってることが二郎と変わんないけど」
『あー、マジか。それは中々にショックかもしれない。でもさ、勉強頑張ったんだぜ、俺』
頬杖をついて静かに見下ろす学年順位表。学年順位は一桁。隣の女子がはしゃいでいる。「クラス順位一桁だったからお母さんに洋服買ってもらえる！頑張ってよかった！」そうかいそうかい。
俺も頑張ったんだけどなあ。
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マカロニ - 夢野さんとの絡みが凄く楽しみです。どのように知り合うのか…。これからも楽しみにしています。 (2019年5月6日 20時) (
レス) id: 9866c7f19c (このIDを非表示/違反報告)
蛇58(プロフ) - 推しってONE PIECEでの推しとかだと思った〜マジびっくり (2019年4月8日 23時) (レス) id: 0dda0db49d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - バイオお好きなんですね……私も大好きです。母がガチ勢です。一章の泣けるぜとあうんから察してましたけどばいおおおお((作者さんと語りたいですアシュリーのぱんつとレオンの尊さとエイダ様の美しさについて。面白いです！！更新頑張ってください！ (2019年3月24日 0時) (レス) id: bd41a59bf6 (このIDを非表示/違反報告)
椿 - こ、これからもお体に気をつけて頑張ってください！( *｀ω´) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
椿 - も、もう…しゅき、しゅきすぎる………！(語彙力の低下) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
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