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173話 「言い訳程度の生きる意味」 ページ29

さっきまで一郎がいたところに二郎が来たらしい。
らしいってのは顔は腕にうずめたままだから気配だけでって事ね。ついでにオロオロしているらしく「え」とか「うわぁ」「えぇ」「ど、どうすんだ」みたいな心の声がダダ洩れである。
そんな感じだったが、そっと俺の隣に座った二郎。頭の上に乗せられたのは掌だろう。

「Aちゃん、だ……いじょぶ?」
『……ん』
「嫌だったら言ってね」
『……ヤじゃない』
「そ、そっか」

断りを入れた後でわしゃわしゃと頭を撫でてきた。
一郎がやったのとほぼ同じような手つき。そして荒さ。

「兄ちゃん、いっつもこうやって撫でてくれてたから」
『ん』
「Aちゃん。落ち着いたら言って」

オドオドしていたのはどこへやら。
結局、ぐしゃぐしゃと一郎が戻ってくるまで撫でまわされた。









「あ、兄ちゃん」
「おう」

一郎が戻ってきたらしく、二郎が離れた。二郎がいたところには一郎が戻ってきて二郎の気配は部屋の中から消える。

『………マジお前ら兄弟なんなんだよ』
「ん?」
『デリカシーはないけど空気は読めるんですか?』
「空気読むためにデリカシー捨ててんだよ」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でる手は二郎と似ているが、やはり一郎の方が荒っぽい。
いい加減に体育座りをやめて当たり前にソファに座る態勢に。そこで漸く気づいたがグラスに麦茶が注ぎなおされていた。恐らく二郎と変わる前にやったんだろう。

「………ま、さっきの続きだけどさ」
『……おう』
「Aはずっと独りで強くなったんだろ?」
『そう……なるな』
「たった独りで生きるって単純にすげぇって思う。俺も似たような感じだったかもしれねーが、折れそうになった時は弟を思いだして踏ん張ったし、支えてくれる仲間もいた。そうやって強くなって、今はこうやってうまい具合に兄貴でいられる」
『………でも、責任がある。俺は自分さえ護れればそれでよかった』
「死ねない言い訳があるのって、意外と救いなんだぜ?っつーか、 Aも分かってんだろ?」

一郎には取って付けた言い訳も表向きの言葉も通用しないらしい。ああそうだ。「死ねない理由」というものは自由を奪う鎖のように見えて、意外に頼もしい。
同族の勘ってやつかな。俺と一郎は似たような壁にぶちあたり、それを血反吐を吐いて痛みに呻きながら強くなった。
だからこそ違いも分かる。たった独りで強くなった者と、誰かと強くなった者の違い。その強さと脆さ。

174話 「金レイア、銀レウスは希少種です」→←172話 「人は見かけによりません」



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マカロニ - 夢野さんとの絡みが凄く楽しみです。どのように知り合うのか…。これからも楽しみにしています。 (2019年5月6日 20時) (レス) id: 9866c7f19c (このIDを非表示/違反報告)
蛇58(プロフ) - 推しってONE PIECEでの推しとかだと思った〜マジびっくり (2019年4月8日 23時) (レス) id: 0dda0db49d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - バイオお好きなんですね……私も大好きです。母がガチ勢です。一章の泣けるぜとあうんから察してましたけどばいおおおお((作者さんと語りたいですアシュリーのぱんつとレオンの尊さとエイダ様の美しさについて。面白いです!!更新頑張ってください! (2019年3月24日 0時) (レス) id: bd41a59bf6 (このIDを非表示/違反報告)
椿 - こ、これからもお体に気をつけて頑張ってください!( *`ω´) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
椿 - も、もう…しゅき、しゅきすぎる………!(語彙力の低下) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作戦隊長 | 作者ホームページ:tp://  
作成日時:2019年3月22日 22時

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