8幕 ページ9
趣のある老舗の並ぶ通り
暮れ六ツの鐘を合図に、店先を飾る灯籠に一斉に灯がいれられる
志穂は少年の後ろをそのどこか懐かしい雰囲気を眺めながらついて行った
そして連れてこられた一軒の料亭に、丁度これから役人たちが集まる宴があるからと志穂は招き入れられた
小さな奥の部屋で身だしなみを整え化粧をすると、志穂は賑やかな声のする広間の前で膝をついた
宴はすでに始まっており、座敷の襖を開け三つ指をついて頭を下げれば、一気にその注目の視線が注がれる
「瞽女の志穂と申します」
行灯に照らされゆるりと顔を上げた志穂の美しさに、一同はしんと静まった
しかしそれも一瞬のこと
座敷の者達はどっと拍手と喝采で志穂を迎えいれた
だが志穂が美しく舞や三味線を披露する中、その座敷の末席に何やら良からぬ事を企んでいる男が一人
先程部下が話していた大層に綺麗な瞽女
まさかこんな所で会えるとは思いもよらなかった
しかも運の良いことに緋い髪の剣客の姿も見えないではないか
成る程、確かに回天党の党首へ捧げるのにこの上ない上玉だと、男は秘かに笑うのだった
すっかり日も暮れ
辺りも静まりかえった橋の下に剣心は一人居た
志穂は宴の席に上がっているのだ
夜も遅くなるのは仕方がない
が、些か遅すぎはしないだろうか
橋といってもたくさんある
曖昧な約束をしてしまったせいで
志穂は探しているのではないか
もしくは彼女の身に何かあったか…
行き違いになっても困ると
ずっと腕組みをして思い巡らせていた剣心だったが、やはり探しに行ったほうが良さそうだ…
夕暮れ志穂と少年が歩いて行った方へ、剣心も向かうのだった
103人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ