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44幕 ページ45
彼の真っ直ぐな問いかけに、志穂はしばらく黙りこくったあとで、小さく頷いた
そして身に起こった忌まわしい出来事の数々を、ひとつひとつ思い起こしていった
初めは松平肥後守様のお下知で起こった
新撰組の隊内暗殺だった
芹沢鴨らの盃に、痺れ薬の入った酒を酌して回った
己の手招き一つで、途端になだれ込んでくる男たちーー…
あの土砂降りの夜は、忘れようにもどうにも忘れられない
次に手を貸したのは、池田屋の奥座敷
二十何人の維新の先生方を相手に吉栄が笛を、自分は舞でも舞っていたか
外に意識を向けさせぬよう、満身の美をこめて…
そして勢い良く梯子段を駆け上がり、真っ先に踊り込んで来たのはよく見知った二人だった
かの坂本先生を抜き打ちにすぱっと額を払った犯人だって、何故だろう自分は知っている
- すず、お前に出来るか…-
そう言ってそばへ寄る土方の顔は、決まって凍えるように硬かった
志穂は夜着の裾を弄びながら、俯いたまま言った
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