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40幕 ページ41

二人はつかず離れず、夜明けの近い空の下を帰路についた
黒笠、鵜堂刃衛は後始末だと言って、自身の血までも刀の錆と変えて絶命していった
黒笠に人斬りを依頼していたのは、維新政府の官僚だという
維新、明治、新政府…
それは見かけだけであり、中身は未だ、
幕末同様の血で血を洗う権力抗争の世
政治屋と人斬りの利害は、まだまだ一到するのだと言った
「刃衛…」
死に逝く目の前の人斬りを儚んで、剣心は見つめていた
刃衛は一度大きく息を吸って、独り言のように話し出した
「そんな目は止せ抜刀斎。俺を殺すと言った時のお前は…もっといい目をしていたぞ」
「……」
「お前の本性はやはり人斬りだよ」
同じ人斬りが言うんだ、間違いない…
刃衛は掠れていく声で剣心に語りかけ続けた

「人斬りは所詮、死ぬまで人斬り…お前がいつまで流浪人などと言っていられるか地獄の淵で見ててやるよ」

その言葉に立ち尽くす剣心の隣りに、志穂も寄った
人のものとは思えぬ気味悪い眼が、今度はじっと志穂を見据える
がふ、と口から大量の血を吐いて刃衛は続けた
「お前もだ、桜木太夫…人は…人を一人でも殺したことがあるかないかで全く異なるものだ…」
刃衛は志穂の姿に、他人の命を奪わんとしてきた鬼女の顔を見出していた
おそらくこの者の他に、そんな勘働きをする者はおるまいがーー…
志穂はきゅっと口を結んで刃衛を見つめた
「この体を支配する死神が言っている…この女は人殺しだよ、と」
「……」
「あまたの女達の中にあって…お前がとりわけ美しく見えるのは、煌びやかな裲襠の上にもう一枚…死の衣を纏っているからだろう」
刃衛は嗤い声が、深い森に響いた
「お前は姫か…それとも鬼か…」
それきり刃衛は何も言わなかった
目を見開いたまま、人斬りのまま死んでいった

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作者名:雪代 | 作者ホームページ:http://なし  
作成日時:2020年6月29日 2時

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