【るろうに剣心】五位の桜木 (ページ4)

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3幕ページ4

「いや、久しぶりにこんな心が洗われる思いをしたよ」
「…おおきに。お侍さんはここいらのお方ですか…？」
彼女は剣心の腰の刀を見つけると、その表情を見上げた
しかしこれだけ近くに立っていても、まだはっきりとは剣心の顔は見えていない様子
剣心はもう一歩彼女に近付いた

「拙者は流浪人。あてのない旅の剣客でござる」
「へぇ、そうですか…けれど何処かでお会いしましたかいなあ」
首を傾げ、じっと見つめる彼女に剣心は優しく微笑んだ
「其方こそ、こんな所で何を？」
見たところ連れはいなそうだった
山奥に娘ひとり、危険極まりない
聞けばつい先日、京の町をでてきたばかり。
瞽女として全国を流れるのだという
確かにここは京都を出て、最初に越えねばならぬ山
その峠の途中で日が落ちてしまったようだ

「そうか、だがこの辺りには、まだまだ山賊も多い。迂回してでも通りを歩いた方が安全だ」
「山賊‥‥ですか？」
初めて聞いたと言わんばかりの彼女の反応に、剣心は少々肩の力が抜ける
「何にしろ、夜は宿をとるでござるよ」
「へえ」
世の中というものをわかっていないのだろうか…
きょとんとした表情で生返事の彼女に、剣心は苦笑した

「其方、名は？」
「志穂、と申します」
「志穂殿。今夜は冷える。向こうに火を焚いているからそこで休むといいでごさる」

剣心は焚き火を譲ってやろうと、自分がいた方向を指差す
けれど志穂は小さく首を振った