10幕 ページ11
ひと気のない森の入り口に
ひっそりと立つ古びた小さな朱い鳥居
剣心はそれをくぐり森の奥へ進もうとして、はたと立ち止まった
月明かりを写し足元にきらりと光った物
それは志穂の髪に揺れていた花飾りの簪だった
剣心はそっとそれを拾うと、彼女の身が危険に晒されたことを確信する
そして簪を大切に懐にしまい、奥へと続く石階段を急いだーー
長い階段を上がりきると
そこには小さな神社が姿を表した
そしてその前に集まっていたのは、刀やら槍やらをぶら下げた大勢の男達
二、三十はいるだろうか
その中心、とりわけこの不逞士族集団の
首らしき男が座っているその隣にやはり志穂の姿もあった
手と口を縛られ自由を奪われている彼女は、抵抗する様子も無く俯いたまま男の横に居た
「…誰だッ」
「てめえは夕刻の‥‥!?」
「…なぜ此処が!」
男達は突如現れた剣心に気が付くと、一斉に立ち上がり武器を構え騒ぎ立てた
「何しに来た!」
「俺達の邪魔しようってんなら、容赦しねェぞ!」
「…まあ待て」
だが志穂の隣にいた党首は、啖呵を切る部下達を静かに下がらせるとゆっくりと腰を上げ薄い笑みを浮かべながら言った
「大方、この女の連れってところか。だが今宵は回天党の門出を祝う宴の夜だ。
宴に瞽女を連れてきて何が悪い」
「…志穂殿は無事でござろうな」
だが剣心は自分に向けられた挑戦的なその言葉を相手にもせず、主格の男を斜に構え見据えた
(‥‥剣心はん?)
姿は遠くてよく見えぬが、この声は剣心に間違い
まさか彼が来るとは思ってもみなかった志穂は、驚いた様子で男の背中越しに目を凝らした
しかし彼を自分のせいで危険な目に合わせる訳にはいかない
気にせず逃げてくれと伝えようと、志穂は心の中で必死で彼を呼んだ
「…で、お前一人でこの人数を相手にする気か?」
党首の男も、周りの輩達もこれ見よがしに武器を担ぎ勝ち誇った様に笑う
しかしその男は、剣心が腰に刀を帯びている事に気が付くと
意外にも党に加わらないかと話し始めたのだった
103人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ