霞柱は雪柱に振り向いてもらいたい３【時透無一郎】

第佰陸譚　 ページ30

寺内「あ、あの、Aさん！」


『え？』


　自分の部屋でやるべきことを終えた時、背後から声がした。

　寺内さん、中原さん、高田さんだった。


中原「あの戦いの後、鉄珍様が送ってくれたんです！」


高田「これを・・・・・・」


　白い布に包まれた、何やら長い棒の様な物。


『ありがとう・・・・・・』


　受け取って、白い布を丁寧にはがしていく。

　見えたのは・・・・・・わたしの刀とそっくりな、日輪刀。

　鍔は色違いのもの。形状は普通のものだが、体格を考慮した軽く細いもの。


『柚音・・・・・・』


　汚れ一つない、ピカピカなもの。鉄珍様が磨いてくれたんだろう。

　柄を撫でると、柚音との思い出が走馬灯の様に蘇ってくる。








ーー柚音「カナエさん、優しいなぁ。お姉ちゃんも、カナエさんを見習って！」


ーー柚音「これが日輪刀・・・。お姉ちゃんとおそろいっ！」


ーー柚音「あのね、今日の合同任務の子、めずらしい髪型の男の子だったの！」


ーー柚音「お姉ちゃん、無理してない？ もっと、わたしみたいに気楽にいこ！」








ーー柚音「お姉ちゃん・・・・・・大好き、だよ」








　泣くな。泣いても、何も変わらない。

　思わず日輪刀をぎゅっと握りしめていると、三人は遠慮がちに腕に引っ付いた。


寺内「泣きたいときは、泣いていいんですよ」


中原「カナエさんも、言っていました。『心の声を、よく聞いてね』と」


高田「泣くことは悪いことじゃありません。前に進むために、大切なことなんですよ」


『っ！』


　思わず涙腺が緩みそうになる・・・が、すぐに顔を引きしめる。


『・・・・・・ありがとう、三人とも。でも、今は大丈夫。

　それから、わたしよりも胡蝶さんを心配してあげてね。わたしは・・・大丈夫だから』


　そう、大丈夫。

　三人は少し困った様に顔を見合わせたが、わたしは何も知らないフリをした。

　と、その時。

　バタン、と、栗花落さんが部屋に入ってきた。








栗花落「A！ 霞柱様と恋柱様の目が覚めたって！」








　☁・・❀・・☃・・☽


　大正コソコソウワサ話！


　Aちゃんの走馬灯の様に出てきた、柚音ちゃんの三つ目の台詞。


「あのね、今日の合同任務の子、めずらしい髪型の男の子だったの！」


　さあその男の子とは、いったい誰なんでしょうね・・・？

　ｂｙ楪日織(なんだかんだ、作者出てくるの初)

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