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｢ちょ、伊沢さん。急に声出さないでください。｣
こうちゃんが大きなリアクションをする、
『伊沢、？』
｢あ、うん。伊沢さん。Aが前ぶつかったっていう…｣
｢この子そうなの！？あの時は本当にごめんね？！｣
さっきの冷静な分析はどこへやら。
どこにでもいる優しい男性のような声で謝ってくる、
『いえ、私の方こそ、すいません、でした…。』
｢本題に戻りましょ？｣
山本さんの声で姿勢を正す。
今はそれどころじゃなかった。
｢Aの働いてる警察署に言ったらどうにかなる？｣
こうちゃんが聞いてくる。
正直、微妙だ。
警察は、実害が出ないと動けない機関だから。
『手紙が来ただけだから、多分だめだと思う。』
｢動いてくれるか確証がないなら頼れないものと見た方がいい。｣
｢うん、法学部の俺から見ると、そこで動かないのはどうかなって思っちゃうけど｣
｢僕達がAちゃんのボディーガードみたいになる、とか？｣
電話の向こうで3人が話しているのが聞こえてくる。
ボディーガード…？
いやいや、それはダメでしょ。
彼らは有名人なんだから。
｢あ、でも、働いているうちは手を出せないんじゃない？｣
｢そっか。いくらストーカーといえど、警察を追い回すことはしないよね。｣
たしかに。
今までどうして実害が出ていなかったかって考えたら、私が警察だからだろう。
ほぼ丸1日、警察署にいたから狙われなかった。
でも彼らと出かけた時の私は例外。
ただの一般人女性になるのだ。
｢じゃあAちゃん、勤務中は先輩からできるだけ離れないで。もし言えるなら先輩にこの事を話しておいた方がいいと思う。｣
山本さんから矢継ぎ早に伝えられ驚く。
ほんわかしている雰囲気を持っているのに、今の山本さんはすごくかっこいい。
｢なにかあったらすぐ連絡して。俺でも、山本さんでも。｣
『うん、ありがとう。こうちゃん、山本さん、伊沢さん。ちょっと、落ち着いた。』
｢いえいえ。それじゃ、本当に気をつけて。…また、落ち着いたら山本さんも含めてご飯いこうね｣
『うん。』
こうちゃんにご飯のお誘いを貰って電話を切った。
やっぱり、人に相談するのは大切なんだな。
ほんの少し、楽になれた。
今日は身体の気持ち悪さをシャワーで流してさっさと寝よう。
職場に行ってしまえばへっちゃらなんだから。
この時間だけ、耐えればいい。
こうして私は一日の幕を閉じた。
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作者名：Karen | 作成日時：2020年4月26日 23時
