You are working hard【ymmt】 (ページ12)

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File.4 第1の事件ページ12

次の日。
デスクワークをしながら、ずっとスマホの連絡帳を開いて “山本祥彰” という字を見ていた。
なんで、そう聞かれたら、自分でもなんでか分からない。
けれど、ずっと見続けてしまう。

｢ニヤニヤしてなに見てんの？｣

『え？』

突然後ろからスマホを覗き込まれて焦る。
連絡帳を開いて笑ってるとか不気味どころの騒ぎじゃない。
変態の領域だ。

｢その名前、前に会った子か、連絡先交換したんだね。なに、好きなの？｣

『い、いやいやいや！好きなんて、そんなこと無いですよ！…多分…？』

何故だろう。
違う、と言いきれなかった。
何でかは、分からない。

｢ふうん。ま、俺は応援しておくよ。ただ！仕事には支障をきたすなよ？｣

『大丈夫です。』

先輩と会話を交わして気がつく。
私、山本さんの事気になってるんじゃない？
数回しか会ってないのに。

まぁいい。
考えたって何も変わらないんだ。
昼休憩に入ろう。
今日は外で食べようかな。

『すいません、休憩入ります。』

｢はいよ。お疲れ～｣

軽く挨拶をしてから事務所から出る。
警察署から少し離れたファミレスでご飯を食べようと思い、歩き出す。
横断歩道を渡ろうとしたが、赤信号になっていたので止まる。
真後ろに若者がいる。
赤信号に引っかかってイライラしている様子だった。
信号って、結構時間食うんだよなぁ。

…あれ？の向かい側に見た事のある人がいる。
山本さんだ。
彼も私の存在に気づいてくれたみたいで、かなり遠いものの会釈をする。
やっぱり、山本さんと顔を合わせると、じわぁっと心が暖かくなる。

そんなことを考えていた時だった。

｢…ﾁｯ、おっせーな｣

後ろから怒りの声が聞こえた瞬間。

ﾄﾞﾝｯ

と、背中を押される。
体が車道側に傾いていき…

ドンッ

と体に鈍い痛みが走った。
そこからはまるでスローモーションのように時が流れてく。
体は浮き、空を飛んでいるようだった。
私はそのまま地面に叩きつけられた。
通行人がざわざわとし始めるのが聞こえた。
信号が青になったのだろうか。
すごいスピードで足音が近づいてくる。

｢Aさん！！大丈夫ですか！？Aさん！｣

この声は…山本さん…？
それを確認することも出来ないまま、私は意識を手放した。