*ﾟスミレの花をあなたへ F9

４９輪＊好きです ページ49

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side:you




……繋いだ手は、
最初は意識し過ぎてどうしょうもなくて、
左手の体温が明らかに高い感覚がしたけど、

気づけばそんな感覚も消えていて、
……ただ、卓さんの温もりが擽ったかった。






「……卓さん、」
「ん？」
「……何でもないです」



なにそれ、と苦笑する卓さんも、
今の笑いはいつも以上に優しくて。


流れる空気が温かくて、
包む雰囲気が柔らかくて。



……ただ、それだけで自覚する。



(……やっぱり私…卓さんの事、好きだ)




そう思えば思う程、
更に想いが募って積もって。



「……Aちゃん」
「はい、？」



卓さんの顔を見れなくて、
妻先を見詰めて歩いていたら、
……びっくりするくらい優しい卓さんの声。



「…………ごめん、呼んだだけ」



……やっぱり、ずるい。


卓さんの一言一言が、
卓さんの行動一つ一つが、
どうしたって私を翻弄するから……




どうしたって、好きが、溢れる。






ふと上を見上げると、
すっかり暗くなった夜空に
小さく星が煌めいていて……綺麗な空。

卓さんにもこの空を見てほしくって、
卓さんを振り向きながら、



「ねぇAちゃん」「あの、卓さん」



掛けた声は重なって。

先どうぞ。卓さんこそ。
って譲り合って結局、卓さんが口を開いた。



「空、……綺麗じゃない？」
「……！」



もう一度空に視線を戻して、
……こくり、と頷く。


私もそれ、言おうと思ってました、
って言ったら、まじで？！ と笑って。



「まじです」
「やば……だって綺麗だもんね」



うん。……綺麗、綺麗。



……多分、この夜空はいつもより、
ほんのちょっと綺麗なだけだと思うけど。


……でも、それでも、
隣の卓さんが、この空を余計に綺麗に見せてる。



卓さんが隣にいるから、
なんて事無い風景だって、

……ほら、いつも歩いてる帰り道だって
何だか輝いて見える。




(……卓さんも、だったりしないかな)




そんな事、
考えるだけ無駄だって、わかってるけど。



だけど私、やっぱり卓さんの事、好きだもん。
何度自覚したか……わからないけど。




「…………卓さん、」

「……なん、？」




カラオケからずっと、繋いだままだった
卓さんの手をぎゅっと……ぎゅうっ、と握って、









「…………好きです」









(……伝えないって、決めてたのに)
(いつの間にか、想いは外に、溢れてた)





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