４７輪＊差し出された右手 ページ47
.
side:you
「次は？」
「もう歌えません！」
両手でバッテンのマークを示して断ったけど、
歌ってよ、と卓さんは引いてくれない。
「Aちゃんの歌声好きやけん」
だから歌って、と。
それを言われたら私はいつも、
断り切れなくなってしまう。
卓さんも、それをわかって
言ってるのかもしれないけど。
……だってそんな事言われたら、
好きなのが�牴寮辞瓩世韻世箸靴討癲�
やっぱり嬉しいと思ってしまうもん。
「あの歌は？」
「……あの歌？」
「雨上がりのなんちゃら……ってやつ」
あぁ、と頷く……けど。
それは、歌えない歌えない。
だってそれ、カラオケにないし。
「……無理ですよ。あの歌、私が作ったんですもん」
「え？！」
そうなん？！ って驚く卓さんに、
そうです！ って返したら、
卓さんは本当に本当に驚いたみたい。
「……や、だって……え？ そうやとしたら、かなりのクオリティ……」
「全然ですよ、あんなの。メロディも歌詞もめちゃくちゃで」
伝えたい事を間接的に伝えるために、
とにかく言葉を繋げただけの歌。
拙くて、荒削りで、中途半端で……
まだまだ、繊細さが足りない。
「……そう？ でも俺、あの歌好きだよ」
「……！」
ありがとうございます、くらい言えばいいのに、
卓さんのその一言が嬉しくて、嬉しすぎて、
……言葉が出てこない。
胸が、いっぱいになってしまう。
卓さんにその一言をもらっただけで、
……今まで歌ってきて良かった、とか。
自分が単純過ぎて、やんなっちゃう。
「……卓さんって、ずるいですよね」
「え、なんで」
「なんででもです」
は？ と口を半開きにして私を見詰める卓さん。
……ふふ、こういう時はカッコ悪いのに。
カッコ悪くて、…………可愛いのに。
試合になったらとんでもなく
カッコよくなってしまうから、
……ほんっと卓さんって、罪な人。
「……もうそろそろ行きません？ 丁度2時間分終わりますよ」
「そーだね」
ソファから腰を上げて、振り返った卓さんが、
……ん、と右手を差し出す。
一瞬その意味がわからなかったけれど、
……もしかして……そういう事？
「……え、と」
「…………あー……ごめん。Aちゃんちょっとお酒入っとるけん、」
私が卓さんの右手を前に戸惑っていると、
顔を赤くして目を逸らした卓さんが、
そのまま手を引き返させようとしたから、
「あ、」
思わず、私の左手が
引き返しかけた卓さんの右手を追いかけて
……その手に触れた。
(繋いだら、離したくなくなる……のに)
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 250人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雛(プロフ) - こばさん» こばさん初めまして^^* わわわ、ありがとうございますっ(*´ω`*) きゅんきゅんしてもらいたくて書いているので、そう言って頂けると凄く嬉しいです！！ 是非これからもよろしくしてやって下さい〜(；；) (2017年7月25日 18時) (
レス) id: cd2200b77f (このIDを非表示/違反報告)
こば(プロフ) - 初めましてです！この作品すごい、大好きです(o^^o)めっちゃキュンキュンします(o^^o)これからも応援してます！ (2017年7月25日 0時) (レス) id: 7ad089bd9c (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - ちあさ〜ん( ´ ▽ ` )ﾉコメントありがとうございます！ とっても嬉しいです^^* またこちらからも、ちあさんのお話読みに行かせて頂きますね〜* (2017年6月28日 22時) (レス) id: 62adc32062 (このIDを非表示/違反報告)
chia(プロフ) - 雛さん〜！ちあです◎卓さんのお話、ようやく読めました。二人の距離が少しずつ少しずつ縮まっていく様子ににやりとしてます。優しい卓さんが素敵です＊更新頑張ってくださいね(*｀･･´*) (2017年6月26日 5時) (レス) id: a31e2faf9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雛*
| 作成日時：2017年6月18日 17時
