37輪*ファン第1号 ページ37
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side:you
「……久しぶりやね」
「そうですね」
バイトを終えてすぐさまお店を後にして、
どこかゆっくり……ってカフェを探そうとしたけど、
結局卓さんの存在がファンにバレるのが怖くて
小さな公園のベンチに座った。
卓さんはいいって言ってたけど、バレちゃったら、
卓さん絶対困るに決まってるもん。
「びっくりしましたよ、卓さんが来るなんて」
「俺もびっくりした」
そよそよと優しく頬を撫でる夜の風を感じながら、
……隣にいる卓さんの温かみも感じる。
肩が触れてる訳じゃない。
けど、多分、卓さんの存在感が大きくて。
「……Aちゃん、何か歌ってよ」
「へ? 今、ですか?」
突然、卓さんから向けられた無茶振りは、
口調からして冗談なんだろうとは思ったけど。
だけど、……卓さんは私の歌声が好きって
言ってくれたから、聴きたいのは本心かな、
って思ったら、……卓さんの為に幾らでも歌える。
「あれ聴きたい。……俺らが出会った時歌っとったやつ」
「うぇ……アレですか」
まぁいいです。小声でですよ?
って注釈して、卓さんがいいよって言ったから、
……遠慮なく、私は小さくその歌を歌った。
歌いながら空を見上げると、
白い月がぽっかり、綺麗に浮かんでて。
歌い終えたら、……ちょっとだけ、
恥ずかしさがこみ上げてきたり。
「……Aちゃん、プロの歌手とかならんの」
「私がですか?! なれませんよ、」
……確かに歌うのは好き。
歌で人を笑顔にしたいって、小さな幸せを
届けたいって、小さい頃から思ってた。
だからそれを叶えるには、
歌手になるのが順道だって、わかってるけど。
「……大体こんなんじゃファンの方とかつきませんし」
ぽろ、と零したネガティブな言葉。
……こういうので、自分の道を狭めてるって
わかってる。だけど、自信なんて持てないの。
「……そうかなぁ」
卓さんは、うーんと首を捻って私を見詰める。
……そんなに見詰められたら、緊張するのに。
本当は、卓さんみたいに夢を叶えられて
キラキラしてる人達が……羨ましい。
私だって、そんなふうに輝きたい、けど。
「……じゃあ、俺が第1号ね」
「……?」
「ファン第1号、俺がなってもよか?」
そう言って……優しい笑顔で私を見るから。
胸が高鳴るのも仕方ない事で。
頬が熱くなるのも当たり前な事で。
(……卓さんはいつだって、ずるいんだ)
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雛(プロフ) - こばさん» こばさん初めまして^^* わわわ、ありがとうございますっ(*´ω`*) きゅんきゅんしてもらいたくて書いているので、そう言って頂けると凄く嬉しいです!! 是非これからもよろしくしてやって下さい〜(;;) (2017年7月25日 18時) (レス) id: cd2200b77f (このIDを非表示/違反報告)
こば(プロフ) - 初めましてです!この作品すごい、大好きです(o^^o)めっちゃキュンキュンします(o^^o)これからも応援してます! (2017年7月25日 0時) (レス) id: 7ad089bd9c (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - ちあさ〜ん( ´ ▽ ` )ノコメントありがとうございます! とっても嬉しいです^^* またこちらからも、ちあさんのお話読みに行かせて頂きますね〜* (2017年6月28日 22時) (レス) id: 62adc32062 (このIDを非表示/違反報告)
chia(プロフ) - 雛さん〜!ちあです◎卓さんのお話、ようやく読めました。二人の距離が少しずつ少しずつ縮まっていく様子ににやりとしてます。優しい卓さんが素敵です*更新頑張ってくださいね(*`・・´*) (2017年6月26日 5時) (レス) id: a31e2faf9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛* | 作成日時:2017年6月18日 17時